東洋学園大学 100周年

「英語教育開発センター」の発足に携わって

東洋学園大学 初代英語教育開発センター長 長谷川瑞穂

長谷川瑞穂

東洋学園「英語教育開発センター(EEDC: English Education Development Center)」は2004(平成16)年に江澤雄一理事長の改革の一環として発案され、大学短大にまたがる組織として設立された。1992(平成4)年に流山キャンパスに東洋学園大学人文学部が設立された12年後であり、2年後には東洋女子短期大学が56年の歴史を閉じることが決まっていた時期でもあった。前年度末の3月、私は理事長室に呼ばれ、初代センター長の内示と同時に、「英語教育開発センターが成功するか否かは本学の将来に関わるので、心して任務を果たすように」という言葉を聞き、身の引き締まる思いを抱くと同時に、江澤理事長の覚悟をうかがい知ることができた。同時に次の2点が脳裏をよぎった。

  1. 東洋学園大学人文学部の初代教務部長として開学前からカリキュラムに関わっていたが、英米言語学科の英文学や英語学などを通して、「英語について学ぶ」(英語に関する専門知識を学ぶ)方向から、センターでは「英語を学ぶ」(英語のスキル・運用能力を高める)という実用英語教育に重点を置くことを認識した。明治以来、日本の高等教育では上記の両方の英語に関する教育がなされてきたが、前者は専門科目として、後者は一般教育の英語教育として発展してきた。ただ、国際化、グローバル化の波の中で、実際に使える英語の需要は高まっていたので、時宜を得た良い提案だと思った。
  2. 前述したようにセンター創設の2年後には短期大学が廃止されることが決まっていたので、短期大学の英語教員を大学に受け入れる枠組みを作らねばならないと思った。

英語教育開発センターでは、学園全体の横断的な組織である運営委員会を組織し、専属の川井涼子事務職員と共に仕事を進めていった。第1回運営委員会は大学と短大の英語担当教員全員が出席できるよう、入学式前の込み入ったスケジュールを縫うようにして、4月1日と2日の2回に分けて開催された。当日の議題は以下の通りだった。

議題
  1. 本センター設立の趣旨と今後の活動への要望 (江澤理事長)
  2. 本センターの活動について (一ノ渡学長)
  3. 現在のカリキュラムについて各部門間の情報交換
  4. 小委員会の検討
  5. 16年度の活動
    講演会
    海外、国内への調査
    その他

その後もほぼ月1回の運営委員会に加え、それぞれの小委員会を必要に応じて開催し、2006(平成18)年度から人文学部、現代経営学部両学部の1、2年生は流山キャンパスで英語や教養科目を共通科目として学び、3、4年生は本郷キャンパスで主に専門教育科目を学ぶというキャンパス共用化の方針に従ってカリキュラムの変更を行い、1年次には「Freshman English」を、2年次には「English Elective」を設置した。

  1. Freshman English
    Freshman English では、共通の教科書で4人の教員が、「読む、書く、聞く、話す」の部門(合計8単位)を担当し、連携を取りながら能力別、少人数クラスで、徹底的に英語の運用能力をつけることに専念する。話す力を養うspeakingは新たに採用された6人の外国人の教員を含め、全員外国人の教員が教えることになった。
  2. English Elective
    2年次からは1年次で培った英語力をさらに伸ばすために、学生の興味に合わせて選択できるEnglish Elective(4単位以上選択可)を設置した。英語力を伸ばすことに重点をおいたSkill-based English、旅行英語、文学、心理学、ミュージック、ムービーズ、ドラマ等自分の興味にあわせて学ぶことができるInterest-based English、英検、TOEICなど資格に重点をおいたEnglish Qualificationsの科目が設置され、学生は自身の伸ばしたい英語の科目が選択でき、好評だった。

上記の英語学習の方法は東洋学園メソッドと呼ばれ、きめ細かい英語指導を行い、大学が『使命』としていた、「時代の変化に応える大学」「国際人を育てる大学」「面倒見のよい大学」を実践することとなった。

【新旧のカリキュラム比較】

新旧のカリキュラム比較

その後、英語教育開発センターにはさらに2つの発展があった。English AreaとCALL教室の設置である。

  1. English Areaの設置

    English Lounge

    流山キャンパス2号館3階にEnglish Loungeが設置され、外国人の教員と自由に英語で会話ができる場English Areaを提供することができた。具体的には月、火、水、木、金曜日のお昼休みにランチを頂きながら英会話をすることができ、東洋学園大学にいながらにして留学気分を味わえる新しいタイプの英語学習環境を整えることができた。さらにEnglish Loungeではクリスマス・パーティやハロウィーン・パーティが催され、英語学習と同時に英米文化も学べる場となった。その後、本郷キャンパスにもEnglish Areaが設置された。問題点はEnglish Loungeに来る学生は限られていたことだった。

  2. CALL(Computer Assisted Language Learning)教室の設置
    語学学習のためにデザインされた統合的情報機器教室であるCALL教室が設置され、学生は自分のペースに合わせて英語を学ぶことができるようになった。音声、映像、文字など様々なモードを同時に利用できるので、デジタル世代の学生はより効果的に英語学習をすることが可能になった。これからはますます英語学習にパソコンやAIを使うことが必要になる。時代に先駆けてCALL教室やEnglish AreaのPC設置を実施できたことは幸いだった。

以上、英語教育開発センター開設に携わった者として、その理念と実践を簡単に述べさせていただいたが、その後多くの先生方の努力により、ますます東洋学園大学の英語教育が充実したことに感謝とお礼を申し上げたいと思っている。