学部長挨拶

人間科学部長  阿部 一

人間科学部長  阿部 一

人間科学部は、「人を支える人」として、社会に貢献できる人材を育てることを目的とします。現代社会では多種多様な能力が求められますが、その土台となるものは、人間そのものへの理解です。人間を理解するための科学の総称が、人間科学です。

一般的に人間科学は、「こころ」「からだ」「社会」についての科学を3つの柱としています。「こころ」についての科学は心理学と呼ばれます。「からだ」についての科学にはスポーツ科学や健康科学が含まれます。「社会」についての科学は社会学と総称されますが、その内容は多岐にわたり、福祉に関する学問や地域社会のあり方について考える学問なども含まれます。本学部でも、この3つを学びの柱としています。

「こころ」についての学びは、身近な世間の中で展開されてきた伝統的な人間関係が薄れてしまった現代社会で生きていくために、必須のものとなっています。家庭、学校、職場、地域等で、さまざまな葛藤や不安にさらされるのは、今や当たり前のことであり、「こころ」についての知識は、自分の心の安定に役立つだけでなく、他者への配慮や援助にも有益です。カウンセリング・マインドは心理専門職だけに要求されるものではなく、人間と関わるあらゆる場面で必要な資質になってきています。

「からだ」についての学びは、競技力の向上を目指すアスリートや体力強化に励む若・壮年層にとって重要というだけではなく、日本を筆頭に高齢化が急速に進む先進国において中・高年層が健康に過ごすためにも必要なものとなっています。また、科学の視点から人間の身体を理解することは、子どもや障がい者と関わる上でも大切です。保育や介護といった分野で活躍できる人材には、「こころ」のみならず、この「からだ」についての知識も求められています。

「社会」についての学びとは、われわれがその中で生きている世の中の仕組みや問題点について探求することです。これからの社会は、子ども、高齢者、障がい者を含め、すべての人にとって暮らしやすいものになっていく必要があります。今の社会のどこに問題点があるのか、それを改善するためにはどのようなことをしていけばいいのか、具体的な事例に触れながら学ぶことで、ひとりひとりが社会をより良い方向に変えていこうとする意識を持つことができるようになります。

人間科学部では、人間科学の幅広い専門分野に目を向け、人間について多角的かつ総合的に学びます。それとともに、東洋学園大学が力を入れている国際化を意識した教養教育と実践的な英語教育により、良識をもち、他者と協調しながら自主的に行動できる「個人」として成長してもらいたいと考えています。「個人」としての自分を大切に思うことが、他者を尊重しようとする思いを生み出します。その思いのネットワークの中でこそ、恵まれない人々や社会的な弱者と共に生きる友愛の精神が育まれます。自分を大切にし、他者を尊重し、助け合いの気持ちを忘れない「人を支える人」となって、誰もが幸せに暮らせる社会の実現を目指す人間になってもらえることを期待しています。