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Z世代のメンズ化粧品プロジェクト:本庄ゼミが日韓比較調査に挑む!【後編】
2024.03.09
“超実践型”の産学連携プロジェクトを実施している現代経営学部「マーケティング戦略・プロジェクトマネジメントゼミ」(本庄加代子教授)。実際に企業より支援を受け、予算をかけてマーケティングを実践し、効果測定まで行います。2023年度は、化粧品開発のエキスパートである「COSMEL」とのコラボが実現。プロジェクトのテーマは「メンズ化粧品市場の日韓のZ世代の意識の比較調査」とし、美容大国・韓国の若者のメンズ化粧品に対する認識・文化をベンチマークし、そこから得た知見を活かして日本市場のマーケティング戦略提案を行うことになりました。前編でお届けしたプロジェクト始動~国内調査までの様子に続き、後編では韓国での市場調査や最終報告会の様子を詳しくレポートします!
Topics 1
韓国のZ世代にドキドキのインタビュー!
美容の本場である韓国のZ世代は、メンズ化粧品に対してどんな印象を持っているのだろう。日本のZ世代とは認識に違いがあるのだろうか――?
そういった“ホントのところ”を探るため、日本調査に続いて韓国調査も行うことにした本庄ゼミの学生たち。
とはいえ、韓国にはまったくツテがない状態でした。そこで、ゼミ生のひとりである木村桃夏さんが粘り強く協力機関を探し、「日韓交流会KJIF(クジフ)」のサポートを得ることに成功。同団体を通じて韓国の若者を集めてもらうことになりました。
韓国での実地調査は、8/30~9/1の2泊3日。
学生たちは自らテーマを決定しプロジェクトが始動した4月から、5月に予算獲得のための企画案の策定とプレゼン、7月に国内でのZ世代を対象としたグループインタビューを行うなど、今回の韓国調査の土台となる様々な課題や試練を乗り越え、6か月かけて調査計画を練り上げました。
さらに、海外への渡航自体が初めてというゼミ生も多く、グループインタビューの準備はもちろん、韓国での交通アクセスや緊急時の病院なども入念に下調べしたうえで現地へ向かいました。
グループインタビュー当日、会場に集まってくれたのはZ世代(2023年現在の20代~30代)の韓国人男女30名。
ゼミ生たちはアイスブレイクで場を和ませた後、韓国の若者たちの美容意識を深掘りするべく、「スキンケアや化粧品に対するイメージは?」「あなたが思う“男らしさ”とは?」「初めて買った美容化粧品は?」など事前に用意した質問を投げかけました。
さらに、韓国の若者たちが実際に使っている化粧水や日焼け止めなどを持参してもらい、そのアイテムに対する詳しいヒアリングも。
「化粧品を選ぶときに気を付けているポイントは?」「実際に化粧品を使ってみてどう感じた?」「化粧品や化粧に詳しい男性に対する印象は?」といったゼミ生の質問が続きました。
インタビューは1セッション2時間半にも及び、それを2セッション行うという気合いの入りぶり。
今回、韓国調査の支援をしてくださった박찬영(Chanyoung Park)さんにゼミ生の印象を聞くと、「想像以上にとても熱心で、礼儀正しくて、本当に驚きました。それだけではなく、韓国の美容や流行、そしてその背景にある文化にも興味を持ってくれていたことがとても嬉しかったです」といううれしいコメントも。
一人ひとりが五感をフルに駆使して調査を行い、韓国の若者たちのメイク・美容に関する意識や価値観を引き出すことに成功したゼミ生たち。
マーケティングリサーチという目的ではありましたが、「同じ世代の韓国の若者と気持ちをあわせて言葉を交わす」という、交流そのものが「楽しい」という気持ちが自然に湧き上がる充実した時間となったようです。
Topics 2
プロジェクト遂行の真の難しさを知る
韓国での実地調査では、貴重なデータが得られただけでなく、ほかにも多様な学びがあった様子。
ゼミ生からは、「海外調査を通じて、人としての在り方や準備が大切であることを知った」「チームで協力することで、連帯感を感じることができた」「基本的だが、お礼や挨拶などコミュニケーションの重要性を知った」などの声が聞かれました。
また、韓国の若者やタクシーの運転手、アパレルの販売員の方との何気ない会話や調査による交流も、「生きた外国語の学習」をすることができた今回の韓国実地調査。
「将来、韓国で就職したい」「海外で働きたい」など、日本にとどまらず国外へ目を向ける機会になったようです。
ゼミのまとめ役であるゼミ長の龍興克典さんは、韓国調査を終えて次のようにコメント。
ゼミのまとめ役であるゼミ長の龍興克典さんは、韓国調査を終えて次のようにコメント。
「韓国調査が決定した段階で、ゼミ長として『バラバラなチームをまとめ上げられるか』『外国で調査!?』という無謀にも感じる大きな目標に大変不安でしたが、不安をかき消すようにプロジェクト管理を入念に行いながら、数ヶ月かけて進めてきました。今、一つの山を越えることができ、自身の確かな成長を感じます。組織マネジメントの難しさ、自分なりのリーダーシップの在り方についての問題意識が高まりました」
また、ゼミ生たちは、実際にプロジェクトを遂行したからこその難しさも感じた様子。
佐藤未彩さんは次のように話し、大学での学びをもとに、実際に経験してみることの重要性を強調しました。
「今回の3日間の視察で一番学んだことは、『トラブルなど予期せぬことに対して、その場その場で柔軟かつ迅速に対応できる力の重要性』です。渡航前に本庄先生から『準備8割』と言われ続け、万全の準備で臨んだものの、不測の事態が起こった時は焦りました。急なスケジュール変更や調整、メンバーの状態など多くの対応が求められ、大変貴重な経験をしました。プロジェクトマネジメントスキルの重要性を理解する大きなきっかけとなりました」
プロジェクト進行中の想定外のトラブルで、メンバーのモチベーションが最も落ちた時に、韓国視察の意義を改めて全体に問いかけ、チームの士気を高めた稲村伊織さんは次のようにコメント。
「今回のプロジェクトの学びは、『韓国でマーケティングリサーチを実践し、成功した』という経験だけではありません。それももちろん大きいですが、それ以上に『プロジェクトを完遂するためには、スキルや能力だけでは不十分である』ということを学びました。危機の時こそ、人格や優しさ、生きる姿勢が問われるということを体感しました。目線を変え、気持ち新たにやるべきことをやる『切り替え力』も非常に重要であると感じました。実際に、自分の一言で沈んだ全体の空気が軽くなったと実感します。プロジェクトマネジメントでは、『近視眼にならないこと』の重要性も学べましたね」
本庄教授からも、「稲村さんの気づきの一言で、全体の雰囲気がガラリと変わりました。教員としては非常に助けられましたね。プロジェクトの最中によく起こる、目の前の小さな課題にとらわれず、最終ゴールを見据えて行動する重要性をよく理解していると感じました。もともと洞察力の優れた学生だと感じていましたが、状況を冷静に観察できていると感じました。実際にその力が活かされている場面を目撃し、正直、感動しました」と高く評価されていました。
また、海外が初めての石澤優太さんは、「語学が十分ではないなかで、どうやったら調査設計通りに進められるか、韓国の人が質問の意図や背景を理解できるか、明るく気持ちよい対応ができるか…などを考え、『伝える』重要性を学びました」とコメント。
横堀伶美さんは、「コンビニや駅、ちょっとしたところで日本語が通じない現実を間近に感じ、韓国語を少しでも話せる友だちがうらやましくなり、勉強を始めようと思いました。それでも、韓国のタクシーの運転手さんや店員さんが日本語で話しかけてくれたり、英語で話したりと創意工夫してコミュニケーションすることが楽しかったです」と話していました。
今回の視察は、2泊3日間という非常に短期間なものでしたが、娯楽で行く「海外旅行」とは異なり、「海外でのマーケティングリサーチの実践」という大きなハードルを越え、さらに、「不測の事態にも対応するプロジェクトマネジメントスキル」や「モチベーション管理」そして、「人と人との信頼関係」の重要性など、様々な視点から自身の糧となる学びを得る、大きな機会となりました。
視察を振り返り、本庄加代子教授は次のように述べています。
「これまでのマーケッターとしての実務経験により、海外調査には慣れていましたが、今回は特別に感じました。Z世代の学生たちを尊重しつつ、ともに奮闘しながら視察を見守りました。調査結果も多くの面白いインサイトを引き出すことができましたが、それ以上に、言葉では上手く表現できない、教育者としての学びを学生よりもらった気がします。本庄ゼミは『学生による完全主導』をうたっていますが、まさに、自ら考え、行動し、反省し、さらに学び、切り拓く…そんな学生たちの力強さと可能性を改めて感じました」
Topics 3
独自のマーケティング戦略を企業に提案
海外調査をやり遂げ、ひとときの達成感を味わったゼミ生たちですが、プロジェクトはここで終わりではありません。最終的なゴールは、パートナーの「COSMEL」にマーケティング戦略を提案すること。
ゼミ生たちは帰国後、日韓両国で行ったグループインタビューの結果を定性分析し、「日本のZ世代にメンズ化粧品を広めるためには、何が課題で、何が必要なのか?」を改めて考察。
そして、Z世代ならではのリアルな消費者像の描写にもとづいたマーケティング戦略を組み立てていきました。
その後、何度もブラッシュアップを重ね、ついに迎えた最終報告会の日。3つのチームがそれぞれのマーケティング戦略を携えて登壇し、「COSMEL」の方々にプレゼンしました。
1チーム目は、「韓国は日本人が想像するほどの『美容大国』ではなかった」という衝撃的な事実の発表からスタート。
実際に韓国で調査を行ったところ、渡航前に立てていた仮説がことごとく崩れていったそうです。
その現実をふまえたうえで、日韓それぞれのZ世代の美容意識や市場を多角的に調査・分析し、「日本ではジェンダーレス化粧品ではなく、より“男らしさ”を強調した化粧品を開発した方がよい」との提案を行いました。
2チーム目は、リサーチ結果を「普及理論」に基づいて分析、低関与層・高関与層それぞれの声を丁寧に拾い、Z世代男子に対する化粧品普及の壁を可視化しました。
その結論として、「現市場の普及段階においては、SNSなどのインフルエンサーよりも、身近な友人・知人からの五感を使った対面影響力が強い」「オンラインではない対面コミュニケーションによる知識普及の重要性」を示唆。
美容意識の低い層にも関心を持ってもらいやすい「眉毛サロン」を美容室に設けてはどうかという具体的な提案も行いました。
3チーム目は、メンズ化粧品普及のカギを「スキンケアの習慣化」と特定。「化粧品=女性」のカテゴリーイメージを超え、「肌磨き」という新たな価値観を生み出す有効性を発表。
18歳成人イベントや大学での就職活動、化粧品自販機の設置などを通じて、スキンケア普及の機会作りをしてはどうか提案としました。
それぞれが異なる角度から洞察し、これまでの常識を覆すような提案を行った3チーム。
発表終了後には、「COSMEL」の白野氏らに加え、本学の教職員からも「十分にビジネスで通用するレベルの内容で、大学生の発表とは思えない。市場拡大へのマーケティングの大きな示唆となる」と感嘆の声が上がりました。
実は、ゼミ生たちが最も恐れていたのは、「“大学生としては”うまくできたね」と言われることでしたが、そんな心配は杞憂に終わり、「マーケティング会社からの提案よりもファクトフルかつ論理的、発想力にも富む優れた発表だった」と高く評価されたほど。
社会の第一線で活躍するビジネスパーソンから認められ、感極まるゼミ生の姿が見られました。
最終報告会の終わりには、ゼミを代表してゼミ長から「COSMEL」に対する感謝のコメントが。「白野氏に『自分たちの世代がターゲットなのだから、自分たちのやりたいようにやりなさい』と言っていただけて、思う存分プロジェクトを満喫しながら成長できました」と語りました。
それは、すべてのゼミ生に共通する感想でもあり、このプロジェクトを経験したことで「自分の言葉で自分の考えを伝えられるようになった」「自分に自信がついた」などの成長を一人ひとりがしっかりと実感できた様子。約8ヶ月に及んだ“超実践型”の産学連携プロジェクトは大成功となりました。