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Z世代のメンズ化粧品プロジェクト:本庄ゼミが日韓比較調査に挑む!【前編】

2023.11.07

産官学連携,現代経営

“超実践型”の産学連携プロジェクトを実施している現代経営学部「マーケティング戦略・プロジェクトマネジメントゼミ」(本庄加代子教授)。実際に企業より支援を受け、予算をかけてマーケティングを実践し、効果測定まで行います。学生たちは、これまでの理論を駆使して、企業さながらの実践を行っていきます。2023年度は、ゼミ生より提案のあった “メンズ化粧品”をテーマとし、化粧品開発のエキスパート「COSMEL」とコラボすることに。ゼミ生たちは「日本市場におけるZ世代へのメンズ化粧品の普及の課題」を特定するべく、国内はもちろん美容大国・韓国でも調査を実施。日韓の比較をもとに市場拡大のヒントを探ります。その濃密なプロジェクトの様子を前編・後編に分けてご紹介します!

Topics 1

メンバーの提案によりプロジェクトを始動!

「大学で学んだマーケティング戦略を実践する」と意気込む学生たちが集まる本庄ゼミ。同ゼミでは、戦略を提案し、動かし、管理するプロジェクトマネジメントスキルを学びます。
企業の協力を得ながら、あたかも会社のように“超実践型”のマーケティングを行うのが特徴です。過去には、累計100名以上の外国人が参加する大規模なインバウンドマーケティングやTikTokやInstagramによるブランド戦略などを次々と展開してきました。

過去に本庄ゼミが行った外国人観光客対象の日本文化体験ツアー「本郷ディスカバリーツアー」の様子

昨年度までのプロジェクトは、指導を担当する本庄教授が産学連携先の企業を選定し、ゼミ生に提示するのが、通例でした。しかし、今年度の第7期生はひときわ熱い情熱を持ち、「せっかく本庄ゼミに入ったからにはゼロから自分たちで考えたい!」と本庄教授に交渉。ゼミ生一人ひとりが意見を出し合い、どんなテーマにするかを議論することからスタートしました。

取り組みテーマに悩むゼミ生。実際の化粧品をみて、可能性をプレ・リサーチ

ゼミ生たちは話し合いを重ね、複数の候補の中から“メンズ化粧品”をテーマに設定。
限られた期間の中でマーケティングを実践するにあたり、「ブランド開発」や「日韓比較のリサーチ」といった観点の中から、「Z世代へのフォーカス」に焦点を絞り、取り組み課題を検討しました。

化粧品に全く興味のない石澤優太さんをモデルとして、化粧の実施前後の心理評価を比較

男性の立場になって議論し、企画を詰める女子学生

メンズ化粧品は、Z世代を中心に市場が拡大している分野であり、まさに当事者であるゼミ生が「自分たちの世代を深掘りする」という興味深い取り組みといえます。コラボ先は化粧品開発のエキスパートであるCOSMELに決まりました。
COSMELについてはこちら

COSMELは、コスメレシピクリエイターの白野実氏が代表を務める「株式会社ブランノワール」と、理系美容家の箱崎かおり氏が代表を務める「一般社団法人美容科学ラボ」による協業事業で、化粧品開発支援や美容科学セミナーなどを事業の柱としています。
今回、「今後の美容業界にとって、よきヒントが得られれば」との期待を込めてプロジェクトにご賛同いただきました。

Topics 2

メンズ化粧品のマーケティング企画を提案

テーマ決定後は、「何を目的にどのようなマーケティングを行うのか?」を煮詰めて行く作業へ。ゼミ生たちはゴールデンウィークや授業時間外でも自主的に集まり市場・商品の研究を重ね、何度も議論を繰り返し、最終的にプロジェクトの目的を「メンズ化粧品への“抵抗感=ツマヅキ”を乗り越え、市場を拡大させること」に絞り込みました。
“ツマヅキ”に焦点を当てた理由は、メンズ化粧品についての調査を深める中で、「興味はあるけど何を選べばいいかわからない」「“女々しい”イメージがある」など、さまざまな“購買の壁”が浮かび上がってきたからでした。そこで、それらを解消できれば、さらなる市場拡大を目指せるのではないか?と考えます。

悩み続けるプロジェクトリーダーの石川大翔さん

熱のこもったプレゼンをする石川大翔さん

続いてゼミ生が行ったのは、“ツマヅキ解消”と“市場拡大”に向けた具体的なマーケティング策を練り上げること。「ツマヅキの原因を明らかにするため、日本と韓国のZ世代にグループインタビューを行う」「メンズメイクを普及させるためのイベントを行う」といった案を自分たちで考え、COSMELや教育研究予算の出資を検討する教職員を招いてプレゼンしました。

COSMELの白野氏や箱崎氏、本学教職員を前に行ったプレゼン

学生のプレゼンを真剣に検討する白野氏

プレゼンのベースとしてゼミ生らが制作した企画書は、入念なリサーチをもとにした説得力のある仕上がりでした。マーケティングの具体的な手法や必要予算、スケジュール計画までしっかりと盛り込まれており、審査に参加したCOSMELの方々からも「ビジネスさながらの価値ある企画書」「Z世代の動向がよく分かった」「若い目線だからこその生きた考え方だ」と高い評価をいただきました。

ゼミ長の龍興克典さんの挨拶。「リーダーシップ論」「消費者行動論」が役にたったという

終了後、ゼミ生たちは涙を流す人が続出。「理解と実践は深さが違う」「わかっていても、なかなか言語化できない」「プレゼンにこれまでの内容が十分に盛り込めなかった」「これほど人と協力したことがなかった。みんなの頑張っている姿勢ややり尽くした様子をみて、感動した」など短い間で達成した充足感と悔しさがにじんでいました。

終了後、「理解することと実践とは、深さが違う」と涙を流す佐藤未彩さんと小澤葵さん

石澤優太さんは「今まで学生向けのプレゼンしか経験がなかった。企業へ向けたプレゼンとなると、もっと高いレベルを求められることを実感した」とコメント。
自分やゼミ全体のさらなる伸びしろを感じ、プロジェクト成功へより一層邁進する決意を固めたようです。

プレゼンの詳細はこちら

Topics 3

第一弾は日本市場のZ世代の調査を実施

プレゼンを経て軌道修正を行い、プロジェクトの方向性は「メンズ化粧品市場におけるZ世代の意識調査と韓国市場のベンチマーク」に決定しました。具体的には、日本・韓国双方のZ世代へのグループインタビューを行うほか、韓国のメイクアップアーティストにもヒアリングも実施し、それらの調査から得られた韓国の美への潜在的な意識や文化の知見をもとに日本でのメンズ化粧品市場拡大を探ります。
しかし、「美」という概念に対して、Z世代の「意識」だけではなく「自我(アイデンティティ)」や無意識に根付く「文化的背景」を考慮した調査を設計すること自体、非常に困難で本庄教授から何度も調査設計のやり直しを求められました。

化粧品への「意識」と「自我」と「文化」の認識を調査であぶり出すために悩むゼミ生。いつも明るくアイデアを出す坂田聖南さん(中央左)、冷静な川口陽さん(中央右)

「消費者行動論」を振り返り、調査の練り直しを迫られるゼミ生

何時間もかけて、皆で作り込んだ資料

方向性が固まったら、さっそく市場調査の実践へ。第一弾として行われたのは、日本でのグループインタビューです。メンズ化粧品のターゲットである男性に加え、女性目線での意見も取り入れるため、男女比約1:3の調査設計にこだわって参加者を募りました。

日本調査の当日は、3時間前からスタンバイする

最後の流れを確認する小澤美裕さん、緊張しながらも励まし合う櫻井華さん(左)と佐藤未彩さん(右)

本番当日は20代の男女24名が会場に集結。インタビュー時は参加者を5つのグループに分け、ゼミ生たちは司会進行役の“モデレーター”、メモを取る“議事録係”として各グループにつきました。そして、「スキンケアでわからないことは?」「あなたが思う男らしさとは?」といった質問を投げかけ、さまざまな角度から“ツマヅキポイント”を探るとともに、メンズ化粧品に対するZ世代の本音を聞き出しました。

24名を対象に、2時間半に及ぶ大規模なインタビュー調査をマネジメントする

実際の調査の様子

化粧品への「関与」別にインタビューを実施。司会をする横堀伶美さん

実際の商品を見せながら女性の本音を引き出す柴田珠莉愛さん(写真中央)

司会の柴田珠莉愛さん(写真中央)と小澤美裕さん(立ち女性)

インタビューで参加者から最も聞き出したいのは、「メンズ化粧品の購入・使用プロセスにおける“ツマヅキ”」について。しかし、事前に行ったインタビュー練習では話が脱線し、思うような回答が得られない結果に。そこで「質問内容に優先順位をつける」などの改善を行い、本番に挑みました。

ファシリテーションスキルを使いながら、笑顔で盛り上げる稲村伊織さん

たっぷり2時間半かけて行われたグループインタビューは無事終了。担当したゼミ生からは「参加者にわかりやすく質問したり、返答を予測しながらタイムマネジメントを行うことが難しかった」など苦労や反省の声も聞かれましたが、COSMELの白野氏からは「想像以上にしっかり調査設計が練られていて、入念に準備がされているのがわかりました」と評価いただきました。

メンズ化粧品はこれまで馴染みがなく、実際に男子ゼミ生が試した感想や疑問を参考にインタビューの項目を作り上げたという調査項目チーム。
「男性や女性の美に対する心理を探るのは簡単ではなかったです。調査とは何かというところから復習し始めました。」「準備が8割と先生に言われてきましたが、電車がとまり参加者が減ったりするなど、想定外のことも多く緊張の連続でした。」「色々失敗はありましたが、自分たちで作り上げた調査を概ね無事に終了することができ、ホッとしています」など、コメントし、達成感と今後の活動への自信を得たようです。

調査設計チームの佐藤未彩さん(右)、柴田珠莉愛さん(中央)、韓国調査のリーダー木村桃夏さん(左)

グループインタビューの詳細はこちら

ゼミ生たちはその後、グループインタビューの結果を分析するとともに、韓国でも同様のグループインタビューを行い、韓国市場の成功要因を分析します。
「実際に美容大国である韓国に足を運ぶようなリサーチを行うことで、メンズコスメやメンズメイクのニーズを理解でき、日本市場におけるメンズコスメ普及への第一歩に繋げることができるのではないか…」と考え、調査設計、及び視察の工程を計画、そして韓国の協力企業の選定と打ち合わせなど、その準備に3ヶ月を費やしました。

そして8月末、ゼミ生たちは韓国へ!
後編では、韓国での調査の様子や、メイクアップアーティストらにヒアリングした様子などもご紹介。紆余曲折を経て、最終的にどんな結論を導き出したのかを詳しくお伝えします。

韓国出発前の成田空港での様子

ゼミ長の龍興克典さんと本庄教授。強い信頼関係で進めてきた

指導を行う本庄教授のコメント:
「振り返ると、5月~7月の3ヶ月で、多くのタスクを皆でしっかりとこなしてきました。テーマ設定をゼロから行い、私が「新しいプロジェクトを協力企業から募るのは、本当に大変だよ!」という言葉にも耳をかさず、皆でよく乗り越えてきたと思います。ゴールデンウィーク中、企画、提案、予算獲得、日本の調査設計、計画実施、韓国とのやりとり、視察計画など、ここまで大変でした。理論を具体的に実践すること、そして人と協調しながら、目標を達成していく苦労と醍醐味を感じたと思います。その結果、お互いの強い信頼関係と新たな目標への自信が全員から感じられます。すでに、何度か感動の場面がありましたね(笑)。これからが本番です。一緒に手を携えて、高みに登りましょう」

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