Academic Life & Research
教育・研究
「“キャラクター”とは何か?」を考える。2023年文化功労者顕彰の金水敏教授がグロコミ学部でゲスト講義
2024.01.05
11/29(水)、グローバル・コミュニケーション学部「言語研究ゼミ」(依田悠介教授)が、日本語存在表現の歴史の解明、役割語という概念の提唱により、2023年の文化功労者に選出された大阪大学名誉教授・放送大学大阪学習センター所長の金水敏氏をゲストに招聘しました。

当日は、英語コミュニケーション学科の「英語コミュニケーション(社会とことば)ゼミ」(飯尾牧子教授)と合同講義として開催。
金水氏には共感の概念を軸に「キャラクターと文法論の連続性」「キャラクターとは何であるのか」「ナラティブとどのような関係があるのか」についてご講演いただきました。
講義前半は、「キャラクターとは何か?どのようなメカニズムで同定されるべきものか?」という金水氏の問いから出発。
金水氏は、キャラクターの同定のための主要なメカニズムとして、金水氏が提唱した「役割語」という日本語学的な考え方に加え、心理学で扱われる「共感」が有用であるとの分析を示しました。
学生たちは、日本語学という枠組みを超えて、心理学のさまざまな実験や研究成果を通して、キャラクターを捉える新たな研究の最前線について学びを深めました。

金水氏
さらに、講義後半では、新海誠監督の大ヒット映画「君の名は。」を題材に人格の入れ替わりをケーススタディとして分析。
主要キャラクターに関して金水氏が提案した枠組みが有効であることが示されました。
これまでの言語研究の枠を超えた、新しい言語研究の領域について、学びを深めるきっかけとなりました。
また、講義の後には、東洋学園大学理論言語学コロキアム(世話人:依田悠介教授)を開催。金水氏が「日本語文法論における「視点」再考―“共感”からの接近―」というタイトルで講演し、これまでの日本語のやりもらい(授受)表現や受身文などのヴォイス現象、複文構造の分析に対して共感の観点から新たな知見の発表をしていただきました。

東学理論言語学コロキアムでの金水氏
※本講演に関しては「分散形態論の語彙挿入メカニズムの研究:日本語助数詞に注目して:研究代表者 依田悠介(22K00537)の助成を受けています。
依田教授のコメント:
「昨年度に引き続き、金水先生のお話を伺えたことにたいしてまず一人の言語学者としてとても嬉しく思います。また、今回の招聘をご快諾くださった金水先生に感謝を申し上げます。今回の金水先生のご講義・ご講演はともにこれまで自身が考えたこともない全く新しい分析を提案されており、本学学生にとっても新たな知見を学ぶ機会になったのではないかと考えます。金水先生のご研究に刺激をいただき、今後自身も学生とともに学びを深めていきたいと考えます。そして、最後になりましたが、この度のご顕賞おめでとうございます」
飯尾教授のコメント:
「金水先生の「役割語」についてはゼミ生が卒論に取り上げることもあり、実際にご講義を受けることができたのは学生たちにとって大きな刺激だったのではないかと感じています。今回はキャラクターに対する「共感」の概念と、ナラティブの登場人物の3つのクラス分けという新しい視点でお話が伺えたのは大変参考になりました」

本学教員有志による、ご顕賞のお祝い(写真左:依田教授、写真右:金水氏)
東洋学園大学では、ゼミの活動を通じて新たな学びの可能性を常に模索しています。
グローバル・コミュニケーション学科の依田悠介教授の言語研究ゼミは、世界の言語を通して人間の認知を探る研究、アニメ・漫画を通してコミュニケーションのあり方の研究などが行われており、外部からの一流の教授陣を講師に招き積極的に交流活動を実施。学内外のつながりを通して、生きる力を養っています。
詳しくはこちら
依田教授略歴:専門は理論言語学・認知科学。グローバル・コミュニケーション学部にて「言語研究ゼミ」を担当。これまでに理論言語学に関する論文、日本語教育、(非)言語コミュニケーションに関しての論文を執筆。