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【公開講座】第6回「少子化問題と大学における性教育(妊孕)の意義」

地域間連携,教養教育

2024.09.19

学問領域にとらわれない幅広い教養(リベラルアーツ)を学ぶ「公開講座」の第6回を7/20(土)に開催しました。

公開講座の最終回は、「少子化問題と大学における性教育の意義」というテーマで、本学現代経営学部の本庄加代子教授が講演。今回は直前に講師を急遽変更しての開催となりましたが、講義参加者からは多くの学びの声や質問が寄せられ、本年度の公開講座は盛況に終了しました。

本庄加代子教授

まず、本庄教授は、各政府機関からのファクトを提示しながら、日本はGDPや健康寿命が高い一方で、人生の選択に関する自由度や社会の不寛容さという課題があると指摘。地域社会における子どもへの無理解や子育ての大変さばかりがクローズアップされている世論の現状を紹介しました。
同時に、GDPでは計り知れない、子育てや社会における子どもの役割と価値について言及。「子育ては幸福感を高めることが調査によって明らかになっており、親自身の成長や地域との繋がりを生み出す。更に、子どもを媒介に、年齢や考え方の異なる新たな関係性が地域に広がり、社会全体の相互理解や寛容さが生まれる。そのことは、治安や社会の安定へと繫がる」と、社会における子どもの存在意義について語りました。

また、少子化の原因のひとつに、適切な性と人生設計について考える機会が乏しい点を指摘。
「若者たちは、現代社会のキャリア構造と女性の生物学的妊娠・出産タイミングのズレを認識しないまま、大学を卒業し、キャリアを始めてしまう。初産年齢が31歳、高齢出産が35歳という現状のなかで、30代に管理職への昇格などが重なると必然的に生むタイミングを逃してしまう構造にある。ましてや2人目、3人目も考えづらい。」と指摘しました。

本庄教授は、学生が社会に出る前の最後のサポーターとして、働く上での性教育、そして妊娠出産に関する妊孕教育を導入し、仕事だけでなく家庭や社会との人間関係の豊かさである「ウェルビーイング(幸福)」を追求する教育体制が必要ではないかと提言しました。
その上で、実際の取り組み例として、本庄ゼミで2023年2月に企画・開催した「大学生男女が学ぶ、フェムテック・ワーク講座」について紹介。
(フェムテック:女性特有の健康意識への取り組み)
「男女共、学生の興味や関心は高く、新しい知識を得て、社会への広がりの重要性を実感した学生が多かった」と、同プロジェクトの成果を語りました。

講義の最後には、社会全体で出産・育児コストやリスクを分散し、支援する体制の必要性についても言及。「父親の育児参加ばかりが強調されているが、それも大きな問題。父親も30代はキャリア形成の真っ只中。日本のGDPの中核的存在でもある。父親にも母親同様に限界がある。50代、60代の子育て終了世代がしっかりと支えていく意識が必要」と主張しました。
日本の少子化対策には、社会に出る前に若年層に妊娠・出産の適切な時期に関する妊孕教育を行うことで、若者の人生の選択肢を広げること、同時に、経済的な負担だけでなく、精神的な負担も軽減できるような、地域で子どもを育て、より寛容な社会が有効であることを主張し、講義を終えました。

質疑応答では「少子化と高学歴化との関係性は?」「大学での性教育必修化は可能?」などの質問が多く寄せられ、質問のひとつひとつに具体的に回答をいただきました。
講演後、受講者からは、「先生のキャリアとご経験をふまえつつ、ファクトベースでの講演であり、問題の所在や核心に近づくことができたように思う」「1歳と15歳の二人の女の子を持つ父親として、今後の二人のキャリアを考えた時、もやもやとしてた部分が、こうしてまとめていただいたことで、かなりすっきりと解消できました。」「少子化問題は、経済的衰退ばかりが強調されていますが、確かに社会全体の相互理解への影響も大きいとわかりました。世の中には子育ての大変さばかりがクローズアップされ、子育てがもたらす幸福のメッセージがなぜ広まらないのかな、と私もずっと感じておりました。寛容な社会は、寛容な一人一人が作るのだと思います。有難うございました」など、多くの学びの声がきかれました。

今年度の最終回であった講演後には、東洋学園の理事長愛知より挨拶をいたしました。
今年度の公開講座にご参加いただいた皆様への感謝とともに、「多くの情報があふれるなかで、確かな知見を世の中に発信していきたい、これからも社会から信頼できる大学をめざしてく。2026年に100周年を迎える東洋学園、みなさんとともに成長してきたい。」と、今後のさらなる発展に向けた意気込みを述べました。

愛知理事長

2024年度の公開講座はこれで全て終了しました。
ご参加いただき、ありがとうございました。