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教育・研究

人間科学

アート作品を通じて「ウェルビーイング」を哲学する。飯田ゼミの学外研修&ワークショップ

人間科学

2022.07.26

人間科学科の飯田ゼミ(専門応用演習/飯田明日美専任講師)3年生が、森美術館での学外研修を実施。
「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」展を鑑賞し、チームごとに作品または作家について発表するというワークショップを行いました。

森美術館を訪れた飯田ゼミ3年生

飯田ゼミでは、都心の美術館・史料館等へのアクセスが良いという本学の立地を活かし、学外研修を積極的に行っています。
今回は飯田講師と3年ゼミ14名が6/30(木)に森美術館を訪問。
パンデミック以降の時代と「ウェルビーイング」(よく生きる・幸福)をテーマとした企画展を鑑賞し、国内外の作家によるインスタレーション、映像、写真、絵画など様々な表現手法を使った作品に触れました。

ツァイ・チャウエイ(蔡佳蔵)《子宮とダイヤモンド》(手前)、《5人の空のダンサー》(壁面)

金沢寿美《新聞紙のドローイング》

ヴォルフガング・ライプ《ヘーゼルナッツの花粉》

堀尾貞治《色塗り》

※美術展の写真はすべて『クリエイティブ・コモンズ表示—非営利—改変禁止 4.0国際』ライセンスの下で許諾されています。

ゼミ生たちは4グループに分かれ、それぞれ興味を惹かれた作品/作家をチョイス。
翌週のゼミで大学内の図書館で選んだ作品についてのリサーチやディスカッションを行い7/14(木)にゼミ全体でのプレゼンテーションを実施しました。

1チーム目は青野文昭《僕の町にあったシンデン》についてプレゼンテーション。
東日本大震災で津波に流された神社を復元するという作品意図や、実際に作品を鑑賞してゼミ生たち自身が感じた「死」への恐怖や「祀り」による浄化のプロセスを、質疑応答を交えながら考察し「ウェルビーイング」とのつながりを発表しました。

続いてのチームは、ヴォルフガング・ライプ《ヘーゼルナッツの花粉》を紹介。
インスタレーション・アートという空間そのものを作品要素とする芸術形式とその鑑賞体験、「花粉」という素材に込められた生命観についての考察を発表しました。

3チーム目は新聞を鉛筆で塗りつぶすという制作手法のインスタレーション・アート、金沢寿美《新聞紙のドローイング》を紹介しました。
ゼミ生たちは会場で作品を鑑賞したときの記憶や写真を見直しながら、「(暗い話題のニュースなど)『闇』を塗りつぶし『光』を表現しているのでは」「宇宙観、時間の表現かも」と、作品意図について活発な意見交換を行っていました。

最後のチームは、美術展のタイトルにもなったオノ・ヨーコのインストラクション・アートを紹介。
「インストラクション作品は決定的な意味が用意されているわけではなく、観客が作品を理解しようという姿勢そのものが作品なのではないか」という考察を元に、「形のない芸術」について語りました。

主に、哲学についてのディスカッション・研究を行っている飯田ゼミ。
今回のワークショップは、「アートと哲学はどちらも、『今ここ』の現実を揺さぶることで、現実を支える『本質』へ切り込み、それを表現する」「(アートの鑑賞と批評を介して)数値化され得ず、多義性や複雑さを残し続けるものに対して、直観を働かせ、想像し、調べ、言語化し、対話しながら、粘り強く考えを深めていく、つまり『哲学的に考える』訓練になれば」(飯田専任講師)との意図で行われました。
その言葉通り、ゼミ生たちは日ごろからそれぞれの意見を気兼ねなく言い合えるゼミの空気感づくりに尽力。
今回のプレゼンにも、その空気感は大いに生かされ、各チームの発表後にはお互いの選んだ作品の表現意図や「幸福」という概念についての考察について、楽しみながら積極的に意見交換する姿が見られました。