Academic Life & Research
教育・研究
【公開講座】第5回「次世代にどんな社会を手渡すか-ジェンダー平等の明日」
2023.08.01
学問領域にとらわれない幅広い教養(リベラルアーツ)を学ぶ「公開講座」の第5回を7/1(土)に開催。
オンラインによる講座配信を行い、332名の方にご参加いただきました。
今回のテーマは「次世代にどんな社会を手渡すか-ジェンダー平等の明日」。
講師の上野千鶴子氏は、東京大学の名誉教授であり、2019年の東大入学式では「東大女子2割の壁」に焦点を当てた祝辞が話題を呼びました。
また、女性学のパイオニアとしても知られ、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長も務められています。

上野千鶴子氏(撮影:後藤さくら)
上野氏は冒頭、「東大女子2割の壁」について解説。
東大女子の合格比率が低い理由は「親の教育投資にジェンダー差があり、女子の受験者自体が少ないため」との説明がありました。
また、上野氏は「女性は産まれた瞬間からさまざまなジェンダー差にさらされている」との見解を述べ、事例を交えながらわかりやすくお話いただきました。
続いて解説いただいたのは、日本のフェミニズムの変遷。
上野氏は「1970年のウーマンリブ誕生以降、差別に対して声をあげる女性たちが増え始め、約半世紀かけてセクハラやDVが問題化されるようになった」と、時代に伴った変遷があった一方で、「労働と経済には切り込めず、女性が食べられるようにはならなかった」とのお話がありました。
さらに、日本の政策や雇用形態の問題点についても言及。
現状、日本はGDPや男女賃金格差、ジェンダーギャップ指数などで諸外国に遅れを取っており、「変わらなければ日本は貧しくなるだけ。日本型雇用も長時間労働もやめるべき」との指摘がありました。
上野氏は最後に、今回のテーマ「次世代にどんな社会を手渡すか」についてコメント。
目指すべきは「こんな世の中を作ってしまってごめんなさい、と言わなくて済むような社会」と述べ、そのためにも「女性は被害者にも加害者にも、そして傍観者にもならないでほしい」と語りました。
日本のジェンダー問題の現在地を知り、その未来について考えるきっかけを与えてくれた今回の講演。
講演後は参加者から多くの質問が寄せられ、活発な質疑応答が行われました。

参加者からの質問に答える上野氏