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10年後に先進国入りをめざすベトナムの道筋とは。特別講座「未曽有の大変局のなかでアジア共同体の未来を語る」第14回

地域間連携

2025.02.06

本学では、一般財団法人ユーラシア財団from Asia助成による特別講座を開講しています。
今年は「未曽有の大変局のなかでアジア共同体の未来を語る」という全体テーマのもと、アジアの諸問題に関する専門家や有識者を講師として招へい。
全15回のオムニバス形式で講義を行います。

12/19(木)に開催された第14回は、講師として東京大学名誉教授、日越大学学長の古田元夫氏にご登壇いただきました。

今回の講義テーマは「2045年に先進国入りをめざすベトナム」。
ベトナム現代史の著名な研究者であり、日本・ベトナム友好協会の会長も務める古田氏に、ベトナムの経済・外交・政治についてお話しいただきました。

講義冒頭、古田氏が学長を務める日越大学について紹介。
日越大学は、2014年に日本とベトナムの友好関係のシンボルとして、両国政府が協力し、ベトナム国家大学の構成する大学として誕生したとのことです。
現在、学部・大学院合わせて約1,600人が学んでおり、「今後もベトナム以外からの学生を多く受け入れ、グローバルな学びの場になる」(古田氏)と述べました。

古田氏

続いての話題は、ベトナムの経済について。
1986年からベトナムで始まった「ドイモイ」(社会主義体制を維持しつつ市場経済を導入し、経済成長を促す政策)の成果について、輸出入の相手国などグラフを用いて解説いただきました。
ベトナムでは1995年から現在まで経済成長が続いているそうで、「ASEAN後進国の位置づけられていたベトナムのGDPは、2025年には先進国であるフィリピンを抜くだろう」と展望を語りました。
経済発展の要因として、古田氏は「政府の適切な施策」「勤勉で質の高い労働力」「外資の順調な流入」3つを提示。
一方で、GDP10%の伸び率が10年続くことが目安となる高度成長期を経験していない要因として、製造業の弱さを指摘し、「若者の間で『モノづくり』への関心が薄く、ITや企業経営への関心が強い」という課題についても語りました。

続いて、話題はベトナムの外交についてへと移り、ベトナムが取る外交の基本方針は全方位外交であると解説。
すべての国連の常任理事国と友好関係を築いている特徴について述べました。
その上で、特に日本・中国・アメリカとの外交関係、および現在の米中関係を踏まえ、ベトナムの立場について言及。
「米中対立の激化を想定しつつ、ベトナムがどのようにすれば自主性が維持できるかを重視すべき」との見解を示しました。

講義後半は、現代ベトナムの政治について、最近の政治の変化や、ドイモイ下での政治改革といった側面から解説。
「ベトナムは、事実上共産党一党体制である中国と類似している面があるものの、国会の機能を強化している」など、中国との相違点について説明しました。
また、「ベトナムが独立後100周年を迎える2045年に向けて、共産党一党体制を堅持しつつ、経済改革を個人のリーダーシップに頼らず『下からのイニシアティブ』で実施し、政治的民主化を推し進めている」と述べ、講義を終えました。

講義終了後には、古田氏と社会人聴講生との質疑応答の時間が設けられました。

一般財団法人ユーラシア財団 from Asia 助成 特別講座
https://www.tyg.jp/koukaikouza/oneasia/index.html