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現代経営

現代経営学部1年生7名が徳島県・上勝町を訪問し、ゼロ・ウェイスト&サステイナブルビジネスの現場を体験!

産官学連携,現代経営

2025.05.26

東洋学園大学では、都心の立地や大学の持つ様々なリソースを生かした「TOGAKU PBL」(PBL=課題解決型学習)を積極的に推進しています。
今回は、現代経営学部の1年生(当時)7名が参加した、現代経営学部主催「SDGsリーダー育成プログラム」の徳島研修について、引率した安藤拓生教授による現場レポートをご紹介します。

2/24(月)から2/25(火)にかけて、「SDGsリーダー育成プログラム」の一環として、現代経営学部の「プレゼンTOGAKU」代表学生らなど1年生7名 がゼロ・ウェイスト宣言や葉っぱビジネスで知られている徳島県・上勝町を訪問。
二日間の活動をとおして、サステイナブルな生活やビジネスがどのようなものであるかを体験して学びました。

リーダーシップ研修一日目は、最初の活動として、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHYを訪問しました。

徳島県の上勝町は、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った自治体として知られており、地域ぐるみでごみの削減と資源の再利用に取り組んできました。
WHYでは、45種類にも及ぶごみ分別の仕組みや、地域住民によるリユース・リサイクルの実践を学びました。
参加学生たちは、その徹底した取り組みに驚くと同時に、「捨てる」ことの意味を改めて考える機会となりました。

誰でも持ち帰ることが可能なリユースされる食器や道具

空きビンを用いたシャンデリア

続いて、徳島の伝統的な発酵茶「阿波番茶」の生産に取り組む百野さんから阿波番茶ビジネスについてご紹介いただきました。

阿波番茶は、緑茶や紅茶といった一般的なお茶とは異なり、乳酸菌による独自の発酵工程を経てつくられる希少なお茶です。7月から8月にかけて手摘みされた大きな茶葉を一度茹でたのち、すり潰して桶に漬け、2〜3週間の乳酸発酵を経て完成するという手間のかかる製法が特徴です。
現在、生産者の多くが高齢化しており、後継者の確保が課題になっているとのことですが、それでもなお、阿波番茶がもつ独自の味わいや、腸内環境を整える発酵食品としての価値が再評価されつつあります。地域の風土と暮らしの知恵が詰まったこのお茶は、まさに「スローフード」の理念を体現するものでもありました。

学生たちは実際に阿波番茶を試飲し、その酸味を帯びたまろやかな風味に驚きの声を上げていました。お茶づくりの背後にある人々の営みや、持続可能な農のあり方に触れることで、単なる商品としてではなく、「文化」としての食に対する意識が深まったようです。

一日目の最後は、関東から上勝町に移住し、みかん農家でありながらアイスクリームショップをご夫婦で営む石川さんから、自分らしい生き方についてお話しいただきました。

石川さんは大学を出て数年東京で働いたのちに、自然豊かな上勝町に移住。農家であるとともに、地域に根ざしながらも新しいアイデアを取り入れた独自の活動を展開されています。
上勝町で採れた様々な食材を実験的に使ったアイスはこれまで食べたことのない味で、学生たちはこぞって試食しました。
「自分たちのペースで、自分たちの好きなことを大切にしながら暮らしていく」という石川さんの生き方に、学生たちは強く心を動かされていました。

様々なフレーバーのアイスクリームを紹介する石川さん

様々なフレーバーを試食して感想を言い合う学生たち

平地と異なり2月でも雪の降る上勝町

その後は雪も降り積もってきたため宿に移動し、一日の総括をするとともに、明日に備えて食事を楽しみました。

翌日は、「葉っぱビジネス」で全国的に知られる株式会社いろどりの彩農家・美馬さんから、地域資源を活かした農業の可能性について学びました。

美馬さんは、上勝町の豊かな自然に育つ植物や葉を“商品”として活用することで、地域に新たな価値と産業を生み出してきた第一線の生産者です。
学生たちは、月ヶ谷温泉周辺の現地を見学しながら、料理や行事に使われる葉や花の種類、その用途についての説明を受けました。たとえば、料理の盛り付けに使われる紅葉や花梅、正月のしめ飾りに使われる松や竹、そして仏事・神事に用いられるさまざまな植物など、それぞれの葉や花が持つ意味と価値について具体的な話を聞くことができました。
葉一枚でも、色合いや形、タイミングによって価格が大きく変わること、またそれが料理人や市場のニーズによって左右されることに、学生たちは驚きと関心を寄せていました。
美馬さんからは、品質管理の難しさや湿度・温度の管理を含むハウス栽培の工夫、さらにはデジタルツールを使った在庫・販売管理の方法など、実践的かつ経営的な視点を含んだお話もありました。
「地方には何もないのではなく、“見方”によっては宝の山なんです」という美馬さんの言葉には、地域資源の価値を自らの手で見出し、届けるという強い信念が感じられました。
学生たちはその姿に触れ、地方創生や持続可能なビジネスのあり方について、教室では得られないリアルな学びを得る機会となりました。

実際に商品となる植物や花の説明を受ける学生たち

リーダーシップ研修の最後に、今回の上勝町における研修をコーディネートしていただいた一般社団法人ソシオデザインの大西理事から、上勝町の変化と持続可能な地域社会について、ビジネスとリーダーシップの観点からご講演いただき、学生たちの目線でこの研修を通して学んだことをディスカッションしました。

「都会の生活においてどのようにゴミ問題を考えればいいか」「サステイナブルな生活とビジネスの両立は可能か」「コミュニティの役割は何か」といった核心をついた疑問も提示され、学生たちはそれぞれの問いを胸に、二日間の活動を終え帰路につきました。

このように、「SDGsリーダー育成プログラム」では、単なる知識の習得にとどまらず、現場に足を運び、地域の人々との対話や体験を通じて、自ら問いを立て、考え、行動する力を育むことを重視しています。今回の上勝町でのフィールドワークは、学生たちがサステイナブルな社会の実現に向けた多様なアプローチに触れ、自分自身の価値観やリーダーシップの在り方を見つめ直す機会となりました。
今後も本プログラムでは、社会課題に真正面から向き合い、他者と協働しながら持続可能な未来をデザインできる人材の育成を目指していきます。

前回の「SDGsリーダー育成プログラム」はこちら
https://www.tyg.jp/research/detail.html?id=20714