Academic Life & Research
教育・研究
【第5回公開講座】日本人の心と文化を描いた小泉八雲。ハーンの残した足跡と文学世界とは?
2026.09.02
東洋学園大学では、最先端の研究を地域社会に還元するために、学問領域にとらわれない幅広い教養(リベラルアーツ)を学ぶ「公開講座」を開催しています。
2026年度(全6回)も、多くの方々に生涯学習の機会を提供するため、都心の本郷キャンパスでの対面に加え、オンラインによるライブ配信も同時開催しました。
第5回は7/18(土)に開催し、130名(対面53名、オンライン77名)の方にご参加いただきました。
今回は、本学元教授であり、翻訳家の河島弘美氏を講師として招聘。
「ラフカディオ・ハーンの世界」をテーマに、お話を伺いました。

河島弘美氏
講義冒頭、河島氏は、ハーンがイギリス人の父とギリシャ人の母との間に生まれ、19歳でアメリカへ渡り、新聞記者を経て40歳で来日した経歴を紹介。
2025年度後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』のモデルとしても注目を集める中、ドラマでは描ききれなかったハーン作品の魅力と、その世界観を参加者と一緒に堪能したいとして、講義を始めました。
講義の前半では、ハーンのアメリカ時代から日本来日初期にかけての足跡に焦点が当てられました。
ハーンは異国情緒に注目するだけでなく、日本人の心や精神生活、ものの考え方などを捉えることを目標にしていたとのこと。
「読者の心に、観察者としてではなく、一般の人々の日常生活の仲間入りをして、彼ら(日本人)の思想で考えているという印象を残すことに努めたい」と記しているそうです。
続いて、島根県松江市で英語教師として過ごした時代を取り上げ、代表作である松江時代の紀行文「神々の国の首都」や、「東洋の土を踏んだ日」などの作品を紹介。
「神々の国の首都」では、下駄の音や柏手、物売りの声といった「音」に焦点を当て、一日の情景を美しく描写していると解説しました。

さらに、「日本人の微笑」や「停車場にて」「英語教師の日記から」などの作品を通じて、ハーンは日本人の精神や教育への姿勢、生徒との交流を印象的に描いていると指摘しました。教師としての日々を通して、日本人の誠実さや学ぶ姿勢に深い感銘を受けた様子が作品に表れていることが語られました。
講演後半では、『怪談』や『骨董』に収録された「むじな」「幽霊滝の伝説」「雪女」などを題材に、ハーン独自の「再話」の手法について詳しく解説。
河島氏は、「ハーンは日本各地に伝わる昔話や怪談をそのまま翻訳するのではなく、登場人物の心情や場面構成を工夫しながら再構成することで、読者に強い印象を与える作品に高めた」と語りました。

また、妻・セツ夫人が語る昔話をもとに作品を生み出したことや、夫婦で創作に取り組む様子についても紹介され、ハーン文学を支えたセツ夫人の存在の大きさにも触れました。
さらに、アメリカの作家ワシントン・アーヴィングの「リップ・ヴァン・ウィンクル」とハーン作品「幽霊滝の伝説」とを比較しながら、怪談における恐怖の演出や構成の特徴について考察。
代表作『雪女』を取り上げ、非日常から日常へと場面が移る中で恐怖を描く巧みな構成や、人間の心理を繊細に描き出すハーン文学の魅力について解説しました。
最後に河島氏は、ハーンの作品は怪談だけでなく、日本文化や日本人の精神性を深く理解するための貴重な文学作品であると言及。
「これを機に、ハーンのファンになっていただけたら、私にとっては最高の喜びです」と参加者へ呼びかけ、講演を締めくくりました。
参加者は作品の背景や創作手法への理解を深めるとともに、ラフカディオ・ハーン文学の奥深い魅力に触れる貴重な機会となりました。
講演後は、会場、オンラインから「ハーンと夏目漱石と重なる部分があるが関係はあったのか?」「ハーンが『我々西洋人には結局日本人を理解できないのだ』と書いているときいたが、それについてどうお考えか?」といった質問が寄せられました。
参加者にハーンについての予備知識があることが伺え、熱心な参加者からの質問に丁寧にご回答いただきました。