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アフターコロナへのキーワード「グリーン・リカバリー」についてWWFジャパンの小西雅子氏に学ぶ

グロコミ

2021.06.22

6月21日(火)、グローバル・コミュニケーション学科の「国際環境論」(古屋力教授)で2年生を対象に、昭和女子大学特命教授 兼WWF環境・エネルギー専門ディレクターの小西雅子先生の講演を開催しました。

テーマは『グリーンリカバリーと気候危機』で、最先端の情報と知見をふんだんに盛り込んだ内容で学生からも多くの質問が出ました。

 

【小西雅子先生profile】
WWFジャパン・専門ディレクター
米国ハーバード大修士、法政大学博士(公共政策学)。昭和女子大学特命教授。気象予報士。2005年WWFジャパン入局。専門は気候およびエネルギー政策。環境省中央環境審議会委員なども務める。

 

【講演骨子】
「グリーン・リカバリー」という言葉。これは、コロナ禍からの復興にあたり、地球温暖化の防止や生物多様性の保全を実現し、よりサステナブルな未来を目指すための経済刺激策。2020年12月にWWFジャパンがおこなった調査では、日本でグリーン・リカバリーを「知らない」と答えた人が80%超だが、世界的にみると多くの国々が関心を寄せている。

グリーン・リカバリーのポイントは次の2点。1.地球温暖化対策の国際協定である「パリ協定」の達成に貢献すること、2.国連のSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも一致した施策を実施すること、感染症のパンデミックや異常気象を含め、環境破壊がもたらすリスクを私たちはすでに経験している。

グリーン・リカバリーを達成し、現状を変えるためには、今の社会の仕組みを根本から改める必要がある。日本で温室効果ガスの約90%を占めるのはエネルギー起源の二酸化炭素で、化学燃料の使用、発電、石油の精製、製造業、運輸業、廃棄物の燃焼などから排出される。好きなだけ電気を使い、贅沢な食事をし、車や飛行機で移動し、宅配便を頼み、新品のものを買う。こういった生活のあらゆる場面で、二酸化炭素が排出されていることを改めて認識しなければならない。「パリ協定」では、地球の気温上昇を2度未満に抑えることを定めており、人間活動による温室効果ガスの排出を、今世紀末なるべく早くにゼロにしようという目標が決まっている。

しかしながら、私達は今、地球の気温が4度上昇する世界に向かっている。地球で排出されている二酸化炭素は、既に自然が吸収できる許容量をはるかに超えている。国際エネルギー機関(IEA)のデータは、私たちがコロナ以前のような経済活動に戻れば、再び温室効果ガスの排出量が増加していくことを予測している。いかにコロナ禍を契機に、温室効果ガスが減った状態を維持できるかどうかが、グリーン・リカバリーを目指す上でカギになっている。今一番重要なのは、今後10年。私たちが大きく生活スタイルを変えることができるか、というところが勝負になってきている。