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本庄ゼミ×ベルギー発の家具ブランドのSNSマーケティングに密着!【後編】
2022.10.20
正解は、先生が知っている訳ではない――。 自ら主体的に答えを生み出し、結果にコミットする難しさを体感するプロジェクトマネジメント教育。 2021年にコロナ禍という逆風を調整しながら完遂させた、現代経営学部「マーケティング戦略/プロジェクトマネジメントゼミ(本庄ゼミ)」の産学連携プロジェクト。 ベルギー発の家具ブランド・株式会社SIXINCH.ジャパンの協力を得て、同社のブランド認知拡大を目的としたSNSマーケティングキャンペーン「タグリンピック」を実施しました。前編では、戦略立案までの道のりをレポート。 後編では、プロジェクトマネジメントを用いた実践プロセスと、どのような成果が得られたのかをお伝えします!
Topics 1
STEP.3 プロジェクトを運営する
2021年度秋学期を迎え、「ハッシュタグキャンペーン」の実作業に入ったゼミ生たち。キャンペーン名を「タグリンピック」と命名し、11~12月の実施に向けて準備を進めていきました。
「タグリンピック」の仕組みは、参加者が対象施設に置かれたSIXINCHの家具と一緒に写真を撮り、インスタグラムに投稿、さらにアンケートに答えると、抽選でプレゼントが当たるというものです。今回は、キャンペーン拡散のために、インフルエンサーとも協業。そのマネジメントも経験し、ポスター制作や協力施設を募う営業、キャンペーンのランディングページやインスタの広告といった『統合マーケティング戦略』を学生がすべて行いました。
準備にあたってゼミ生たちは、「経営管理」「会計」「営業」「クリエイティブ(ポスター・ランディングページ)制作」「キャンペーン」「効果測定」などの役割を分担しました。大規模な予算を使いながら、一つのゴールに向かってプロジェクトを進めることの難しさを実感。情報共有不足やスキル不足、さらにはコロナという逆風により様々に妥協しながら、期限内に答えを出していきます。
「営業班」は、施設への協力交渉を担当。
SIXINCHの家具が置かれていて、かつ集客力の高い施設を選んでコンタクトを取り、キャンペーンへの協力を依頼しました。興味を示してくれた施設には、Zoomを介してオンラインで企画概要を説明。ビジネスメールも書きなれず、大人とのビジネスの電話もはじめての状態であったため、事前準備を怠らず、企画概要だけではなく、交渉する相手企業様の情報を把握しながら進めていきました。最終的に11施設の協力を得ることに成功しました。
「最初は緊張しましたが、どこの企業様も熱心に私達の話に耳を傾けてくれて、非常にありがたかったです(岩崎亜由美さん)」
さらに、キャンペーンのPR効果を高めるため、インフルエンサーにもアプローチ。14名のインフルエンサーがPRに協力してくれることになりました。
その他、「ポスター班」は施設に設置するポスターの制作を担当。200枚以上のポスター案を作成し、訴求力を加味しながら、協力企業のご意見も取り入れながら、ようやく完成していきます。
「広告班」はインスタを使ったキャンペーン広告の出稿計画を練り、最もクリックされるように効果的に配分することに苦心しました。また、「LP班」はランディングページ(広告の飛び先のページ)の制作をゼロから構築。デザインだけではなく、文字配列や伝えるべきことの情報の整理をしながら、魅力的なサイトにしていきます。「会計班」は約100万円におよぶ予算を管理し、「効果測定」では、精緻にアンケートを設計し、キャンペーン効果を正確に測定できるように工夫します。学生からは「たかがアンケートだけど、回答者の負担や企業の要望を両方かなえつつ、正確に効果を測定するように設計するのは非常に難しい」との声が聞かれました。
そしていよいよ、インスタグラムを使ったマーケティングキャンペーンがスタート。
ゼミ生たちはインスタでの投稿状況や拡散状況を確認しながら、各施設の視察にも出向き、現場の企業の担当者の方に挨拶をしながら、よりキャンペーンが効率的に運用できるように改善を重ねていきます。
実は、開始後3週間は思うようにタグ付けが伸びず、このままではKGI達成にならないかもしれない…という危惧がありました。
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「タグリンピック」の成果
ゼミ生たちがゼロから企画し、実現させたSNSマーケティングキャンペーン「タグリンピック」。
リアルな企業活動さながらのプロジェクトを成功させただけでも見事ですが、それに甘んじず、結果の分析まできっちりと行いました。
当初目標とされていたSNSマーケティングのKGI(最終到達目標)ですが、フォロワーの獲得が134人と当初目標を達成しました。ブーストは、当初目標の20万リーチにわずかにおよばなかったものの、19.6万リーチとなりました。
プロジェクトの本質的な目的は「SIXINCHの認知度を高めること」でした。
特に、「20~30代女性への認知拡大」がメインテーマでしたが、それは達成されたのでしょうか?
答えはYES!キャンペーンの参加者は約7割が20~30代の女性で、狙い通りのターゲットの獲得に成功。
またSIXINCHへのブランドイメージは、キャンペーンを通じて魅力的だと感じる人の割合が85%に達しました。
最終報告会:
2022年3月には、こうした分析結果も交えた最終報告会をオンラインで実施。
SIXINCH.ジャパンのゼネラルマネジャー・取締役統括部長の佐々木勝氏にもご参加いただき、次のようなコメントをいただきました。
「学生の皆さんの最終発表の表情を拝見し、とても良い機会にご一緒させて頂いたことに感謝しております。企画を考え、実行し、やり抜くという一連の経験は、今後、社会で大きく羽ばたかれる糧になるかと思います。コロナ禍で計画通りにいかないことも多い中、成果が出たのは、協力企業に対して誠実に熱心に対応されてきた成果だと思います」
ゼミ生の熱意とやる気に共感し、今回のプロジェクトに賛同してくださったという佐々木氏。
その印象は最後まで変わらなかったようで、「ゼミ生のみなさんは終始とても熱心で、プロジェクトに対して真摯に向き合っていると感じました」とのお言葉もいただきました。
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プロジェクトを終えて
<ご家族>
本多千草さんのお父様 “社会に羽ばたく上での大きな自信となる。”
「娘は、実際の企業との接点を持つことで、社会人としての立ち回り、姿勢などリアルに感じた貴重な経験だったと思います。またコロナ禍という大人でも経験したことのない状況の中で創意工夫して目標達成できたことは、今後社会に羽ばたく上で、大きな自信になったと思います。先生には想定にないご苦労をかけたと拝察し、非常に感謝しております」
<学生>
本多千草さん “仲間と一緒に達成する楽しさと、心から信頼する喜び”
「プロジェクトでは仲間と一緒に一つのものを作り上げる楽しさ、達成感を感じることができました。また、実践的に活動する中で企業の方々と関わることも多く、今後社会に出て役立つこともたくさんあるのではないかと思いました。この10カ月間を通じて、自分自身の成長を実感しています!ゼミの仲間の中では、本来の自分を見せることができ、自分らしさとはなにかを考えるきっかけになりました」
鈴木悠作さん “事業運営の日々の努力をリアルに実感”
「親が自営業なので、本プロジェクトを通じて事業を存続することの難しさ、日々日常業務を積み重ね、信頼を生み出しながら利益を出すことの難しさがわかるようになりました」
石井侑樹さん “リスクを加味しながら、いかに進めるか?”
「企業様に営業をさせていただくという貴重な経験をしました。企業様から想定外の質問を投げかけられ、学生と大人では目線が違うと痛感したことも。プロジェクトをいかに効率よく、(コロナという環境下で)リスクを減らして進めるかを実践的に学ぶよい機会になりました」
篠葉海来さん “積極性を磨くために…”
「積極性を磨きたくて、本庄ゼミに入りました。しかし多くのやる気のある仲間の中で、自分自身を出してプロジェクトを進めることは難しかったです。最終報告ではプレゼンを担うことになり、自分を活かしながら調和して仕事を進める感覚が身につきました。思い起こせば、企業へのプレゼンそのものにもすっかり慣れていました」
酒井有紀乃さん “本庄ゼミに入ってよかった!”
「個性的なメンバーと一緒に、本庄ゼミでしかできないようなプロジェクトに取り組めてとても光栄でした。みんなが自分の時間を削ってまでいいものを作り上げようと努力している姿がすごいと思いました。自分たちで企画から運営まで行った経験は、必ず自分の力になるし、就職にも生きると思うので、このゼミに入ってよかったと感じています」
福満響子さん “限界に挑むことで、将来への可能性を感じた”
「営業から広告制作、出稿計画まで多くの仕事を抱えて大変ではありましたが、とても充実した日々でした。今までの学生生活では『自分にできること』をあまり挙げられませんでしたが、このプロジェクトを通じて『自分にできることがこれだけあるんだ!』という実感が持てたり、リーダーとして活動する自信もつきました」
佐々木琉斗さん “軌道修正をしながらプロジェクトを運営する難しさ”
「副ゼミ長の仕事は、司会などで人前に立つことが多く、最初の頃はうまく進行できずに落ち込むことも多々…。でも、回数を重ねるうちに慣れ、指示を出して周りの人たちを動かせるようにもなったかなと思います。また、このプロジェクトを通じて、状況を鑑みながら、様子をみつつ段階的に物事を進める経験ができて勉強になりました」
岩崎亜由実さん “新たな自分自身を発見した”
「私は昔から自分の意見が言えなかったり、自分なりの意思があまりなかったりしたのですが、営業活動を展開するなかで大人と対峙できる自分に気が付きました。また仲間から『常に困っている人がいたら,率先して仕事をしてくれる』と言ってもらったり、広告制作の機会などで将来の自分の道筋が見えたりしました。仲間や将来の仕事、そして残りすくない大学生活に活かせる学びが沢山ありました」
倉内優太さん “ゼミ長として引っ張りきれなかったが…その先に”
「『俺が引っ張っていく!』と決心してゼミ長に立候補しましたが、思うようにいかないものでした。約10カ月にも及ぶゼミ活動中、気持ちが切れたり、仲間と意見がぶつかり合ったりすることもありましたが、そういう過程を経たからこそ自分も成長できたし、プロジェクトもそれぞれが主体的に動くようになり、まとまっていったと思います。経営の難しさ、仲間と仕事をする楽しさを深く知ることができました」
<教員>
本庄加代子准教授 “答えのない解を、見出す難しさと面白さ”
「初めてのSNSマーケティング、初めてのプロジェクトマネジメントをコロナ禍でも完遂でき、プロジェクト目標となるKPIを達成した学生たちを誇りに思います。単に表面的なマーケティングアイデアに留まるのではなく、実際に組織だって実践を成すことは簡単なものではありません。マーケティングという一見華やかなイメージのある経営手法においても、その背後では、人的資源管理やリーダーシップ、予算管理等といった経営の基本的スキルが求められ、まさにこれまでの3年間の学びを総動員して取り組むこととなりました。ゼロから構想し、それを実現する力と、そのプロセスを管理するプロジェクトマネジメントのスキルを、社会人になってからも生かしてほしいです」
今回のプロジェクトの紹介動画はこちら