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教育・研究
ソマリアの紛争の現状と問題解決について学ぶ。「グローバル協力論」ゲスト講義
2022.01.26
12/14 (火)、グローバル・コミュニケーション学科科目「グローバル協力論」(井上実佳准教授)にて、NPO法人アクセプト・インターナショナル広報ファンドレイジング局の山﨑琢磨氏をゲストにお招きしたオンデマンド講義が行われ、紛争地域の現状と紛争解決に向けた取り組みについて学びました。

講義前半では、アクセプト・インターナショナル(以下、同NPO)の「元テロリストの若者がテロリストではない未来を歩むことができるよう支援する」という活動指針や、紛争当事者の若者たちへの脱過激化と過激化防止といった支援策について、紛争地域での活動内容をお話いただきました。
また、山﨑氏自身も現地で活動されていたソマリアの紛争やテロとその解決に向けた同NPOの活動の詳細について、山﨑氏制作の動画で紹介いただきました。

山﨑琢磨氏
動画ではまず、同NPOの活動の前提として、これまで国際社会が紛争地域に対して行ってきた軍事力による介入では平和的解決は望めないということをふまえ、紛争当事者との対話を通じてテロ組織の勢力を削いでいき、彼らの考え方と行動を変えていくという人権に基づく新たなアプローチの方法について解説いただきました。

次に、紛争が激化するソマリアの現状と、同NPOが紛争地域で行っている元テロリストの若者へのサポートプログラムについて、一人のソマリア人少年のストーリーを通して紹介。
テロリストになる背景には人それぞれ違った深刻な問題があり、テロ組織を脱した後も社会復帰に向けた個別の支援やフォローアップが必要であることを説明いただきました。
さらに、多くの紛争地域が抱える干ばつや水害などの自然災害についても把握した上でひとりひとり異なるサポート方法が望まれるなど、『誰ひとり取り残さない』という同NPOの活動理念についても解説いただきました。

同NPOがソマリアの刑務所で行っている支援プログラム
最後に、同NPOが「テロや武力紛争に関わる若者の権利宣言」を国際条約として制定するという目標を掲げ、今後の社会的活動を展開していくというビジョンについてもお話いただきました。

講義の後半は、事前に学生から寄せられた質問を山﨑氏に回答いただく質疑応答パートとして展開。
学生からは「同NPOに関わろうと思ったきっかけは?」「紛争地域での経験の中で助けたくても助けられなった経験はあるか」「どんな時にやりがいを感じるか」といった山﨑氏自身への質問や、「学生時代に経験しておいた方がよいことは?」「国際協力分野で働く上で大切なことは何か」というキャリアに関する質問、さらには「日本のメディアはNPOなどの活動をもっと発信していくべきと思うか」「日本としてアフリカに対し果たしていく役割とは?」といった日本と関連づけた質問にも答えていただきました。

質疑応答パートは井上准教授と山﨑氏の対談形式で進行
山﨑氏からは「国際協力という大きな枠組みの中では、定められた期間内で成果を出すことが求められるが、『人』へのサポートは長い目で見ないと成果が見えづらく、評価もされにくいというジレンマもあるという厳しい現実がある反面、関わった元テロ組織の若者たちが職に就いたり新しい家族を持ったりして、今度は人を助ける側になっていると聞いた時に大きなやりがいを感じる」といった体験談や、「現場に出ることだけが仕事ではないので、学生のうちからできることを考えて実践してほしい。特にパソコンスキルはとくかく必要になる。また、言語に関しても英語の他に興味のある地域の言語を勉強しておくと、現地で活動する際に大きなメリットになる」といったアドバイスをいただきました。
紛争地域での体験談や今後の活動ビジョンまでうかがうことができて、学生たちにとっては教科書や研究結果からは学べない「世界のリアル」を肌で感じる貴重な機会となりました。