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教育・研究
[現代経営研究会]第2回を開催。震災後、「結ぶチカラ」で地域を支えた南三陸ホテル観洋の女将が登壇
2024.11.06
さまざまな業界・企業の経営者をお招きし、現代社会を読み解くヒントを学ぶ「現代経営研究会」。
第17期となる今期は、「結ぶチカラ」を年間テーマとし、全5回すべて対面・オンラインでの併催を予定しています。

対面・オンラインともに多くの方にご参加いただいた第2回講演の様子
10/23(水)に行われた第2回講演には、南三陸ホテル観洋 女将の阿部憲子氏を迎え、「東日本大震災からのあゆみ~人々の架け橋として~」という演題でご講演いただきました。
宮城県南三陸町の海沿いに建つ同ホテルは、震災直後から600名もの避難者を受け入れ、その後も多彩な取り組みで地域を支援。震災を風化させないための語り部活動を行っていることでも知られています。

南三陸ホテル観洋 女将の阿部憲子氏
阿部氏は冒頭、2011年3月11日に発生した東日本大震災の様子を回顧。「今までにない大きな揺れが発生し、地域住民の方々が続々と避難してきた」「惨状を見た若い女性スタッフが次々と泣き崩れた」など、現場の状況が生々しく伝わってくる内容でした。
そんな中、リーダーである阿部氏は「みなさんを守らなければ、支えなければ」と奮闘。「心を強く持って」とスタッフを励ましながら、すぐに焚き火の準備が進められ、厨房には長期戦になることをイメージして、まずは今ある在庫で1週間分の献立を考えるように伝えたそうです。

減災を熟考して建てられた南三陸ホテル観洋は、震災直後から避難所として活躍
ホテルは1~2階が津波の被害を受けたものの、硬い岩盤の上に建っていたため建物自体は無事。震災翌日から被災者にロビーを開放し、給水車が来るようになってからは一部の風呂の提供も始めました。
また、状況が少し落ち着いた頃には、審査が厳しいATMの設置も交渉。5つの銀行に断られ、「未曽有の災害時でも平時のルールが適用されるのか」と落胆しつつも諦めず、6行目でようやく設置が叶ったそうです。

断水が続くなか、海水の淡水化処理システムも導入しながら地域の人々をサポート
民間でありながら、地域住民のためにさまざまなチャレンジを続けてきた阿部氏。ホテルが2次避難所になってからは、地域の未来に欠かせない「子ども」と「経営者」を多く呼び入れたそう。
そして、自治会の設立、子ども向けの学習支援、ひきこもり防止のためのイベントなども行いながら、「新しいコミュニティ」を築き上げていきました。

2年間で600回以上のイベントを行い、地域の人々を元気づけた
その後、人々が徐々に仮設住宅へと移ってからも、高齢者への風呂の無料開放、仮設住宅を巡る無料バスの運行などを行い、地域の人々の架け橋として活躍。
さらに、地域の商店をサポートするべく「南三陸てん店まっぷ」を制作したり、「震災を風化させないための語り部バス」の運行や震災遺構の保存活動にも力を入れてきました。

毎年改定されている「南三陸てん店まっぷ」の最新版を会場で配布
阿部氏は最後に、「震災を通じて、『諦めないこと』は大事だと感じた。今だからできること、私たちだからできることを、とチャレンジしてきた。失ったものも大きいが、人々とのご縁、温かい想いが支えになって進むことができた」と語りました。
講演後は、本学の教員や在学生をはじめ、対面・オンライン双方の受講者からたくさんの質問が寄せられ、活発な質疑応答が行われました。

阿部氏に質問する本学・現代経営学部の3年生
次回の現代経営研究会は11/6(水)に開催。株式会社東京ドーム 代表取締役社長 COOの長岡勤氏を迎え、「地域との結びつきを大切に~東京ドームシティのまちづくり~」という演題で講演いただきます。
詳細・受講のお申込み(事前登録制)は以下リンク先にてご確認ください。
現代経営研究会