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【公開講座】第3回「個をいかす、これからの教育―生成の教育学から考える、未来の学びのかたち」

地域間連携

2025.07.10

幅広い教養(リベラルアーツ)を学ぶ今年の「公開講座」は「『問いただす、今の教育。つなぎ直す、未来の社会。』―初等・中等・高等教育を越えて考える、子どもと社会のこれから―」をテーマに、全6回の講座を開催します。
2025年度も、多くの方々に生涯学習の機会を提供するため、都心の本郷キャンパスでの対面に加え、オンラインによるライブ配信も同時開催予定です。

第3回は6/7(土)に開催し、20名の方にご参加いただきました。
今回の第3回(6/7開催)と、次回の第4回(6/28開催)は “中等教育の分岐点で―「個」と「政治」、そして学びの意味の再構築へ。” がテーマです。

第3回は「個をいかす、これからの教育―生成の教育学から考える―」と題し、講師にNPO法人青春基地理事/三菱みらい育成財団研究員の石黒和己氏を迎え、「生成の教育学」という新たな教育理論とその実践について、お話しいただきました。

NPO法人青春基地理事/三菱みらい育成財団研究員の石黒氏

石黒氏は、子どもたちのウェルビーイングの低下や不登校の増加といった、現代の教育現場が抱える課題の背景に、従来の「発達の教育学」があると指摘します。
この教育観では、子どもは社会が定めた理想像に向かって段階的に成長すべき存在とされ、学びは将来の目的を達成するための手段と位置付けられます。
その結果、子どもたち自身の声や関心が置き去りになってしまうという問題があるといいます。
それに対して石黒氏が提唱する「生成の教育学」は、一人ひとりの好奇心を出発点に、他者や世界との出会いを通じて学びが生まれるという考え方です。
「今・ここ」にある感覚や問いを大切にし、評価や効率に縛られない余白のある学びが、自由や創造性を育む土壌になると語りました。

石黒氏は続いて、「生成の教育学」の実践例として、2021年に沖縄の高校で実施したワークショップの事例を紹介しました。
コロナ禍で中止になった修学旅行の代替として設計されたこの取り組みでは、生徒が自ら考え行動する学びの場が生まれ、2024年には校則緩和の実験へと発展しました。

最後に石黒氏は、教師のウェルビーイングの重要性にも言及し、三菱みらい育成財団での活動を通じて、全国の教育現場での変革を支援していることを紹介しました。

質疑応答では多くの質問が寄せられ、なかでも関心が集まったのは、「自由な学び」と「評価」をどう両立させるかという問いでした。
石黒氏は、「評価は、あくまで多面的な人間の一部を切り取る手段に過ぎない。過度に重視すべきではない」とし、評価の基準を単一化せず、個性や持ち味を尊重する柔軟な姿勢が重要だと語りました。
こうした考えに、参加者からは深い共感が寄せられました。

次回の公開講座は7/19(土)に開催。
「高等教育におけるイノベーションの5階層モデル: GENKEI English PBL」をテーマに、東洋学園大学 現代経営学部 教授セーラ バーチュリー 氏にご講演いただきます。

対面・オンライン併催、要事前申込み(無料)。ぜひご参加ください。

公開講座の参加方法や最新情報、参加のお申し込みはこちら
公開講座(リベラルアーツ)|東洋学園大学公式サイト