TOGAKU IMPACT 2030
基本構想、そして改革の現在地
2030年に向けた東洋学園大学の挑戦と展望

2026年 9月
東洋学園大学学長 辻中豊

はじめに:TOGAKU IMPACT 2030が問いかけたもの

「TOGAKU IMPACT 2030」は、2030年以降に本格化する大学を取り巻く環境変化を見据え、東洋学園大学がどのような大学を目指し、そのために何を改革していくのかを示した大学改革の基本構想である。

その骨子は2024年1月31日に全学へ提示した。その後、教育理念の策定、TOGAKU PBLの具体化、学部教育改革、初年次教育改革などを進めてきた。2025年度から開始した第2期中期計画も、このTOGAKU IMPACT 2030を基本的な指針として策定したものである。

私は、この構想を通じて東洋学園大学が目指す方向を示してきた。ここでは、TOGAKU IMPACT 2030に込めた考え方(第一部)と、この2年半の改革の歩み(第二部)、そして2030年に向けて本学が目指す大学の姿を改めて整理し、この構想に基づいて実践してきた取組と現在地を振り返りながら、2030年に向けた展望を示す(第三部)。

第一部 基本構想

1.なぜTOGAKU IMPACT 2030なのか(続きを読む)

2024年初頭、東洋学園大学は厳しい学生募集環境に直面していた。

18歳人口は2030年頃までは比較的緩やかに推移するものの、その後、本格的な減少局面に入ることが予測されていた。東京の私立大学もその影響を免れることはできない。さらに当時、本学では18歳人口や大学進学者数の減少を上回る速度で志願者・入学者が減少していた。

2024年度の入学者は470名となり、当時の入学定員655名に対して72%にとどまった。特にグローバル・コミュニケーション学部の定員充足が大きな課題となっていた。

しかし当時、本学が直面していた状況は、単なる人口減少だけでは説明できるものではなかった。

大学の収容定員充足率を重視する制度変更、上位大学による年内入試合格者数の拡大、高校生が希望する学問分野の変化など、大学間競争そのものが構造的に変わりつつあったのである。

さらに、大学改革には時間的な制約もあった。

学部・学科の収容定員充足率が一定水準を下回れば、新たな学部・学科の設置が困難になる。また、大学全体の収容定員充足率が8割を下回ることは、学生にとって重要な修学支援制度の機関要件にも関わる。

私たちが危機感を抱いたのは、入学者数という数字そのものではない。

本質的な問いは、「これからの社会において、大学はどのような価値を提供できるのか」であった。

社会が大きく変わる中で、大学もまた変わらなければならない。

その一方で、改革を先送りする余裕もなかった。当時の財政予測では、2030年頃までは改革を実施する体力が残されていると考えられた。だからこそ、改革に着手するなら今しかないという認識に至った。

「改革するなら今しかない」

これが、TOGAKU IMPACT 2030の出発点であった。

2.2030年に目指す大学の姿(続きを読む)

TOGAKU IMPACT 2030が目指しているのは、単なる定員確保や組織改革ではない。

私たちが目指しているのは、

学生一人ひとりが、自分の可能性とフィールドを見つけ、自信を持って社会へ歩み出せる大学

である。

その実現によって、

受験者数の拡大 → 入試における選抜性の向上 → 学生の成長 → 教育効果の向上 → 大学への評価向上 → さらなる受験者増

という好循環を生み出し、2030年代においても選ばれ続ける大学を実現することを目指している。

しかし、大学教育の成果は、単に卒業時の知識量だけでは測れない。

学生が大学で何を学び、どのような経験を重ね、どのように成長したのか。

そして、その成長が社会の中でどのように活かされていくのか。

そこに大学の価値があると考えている。

大学に入学する時点で、将来の目標が明確な学生ばかりではない。

むしろ多くの学生は、

  • 自分は何が好きなのか
  • 何に関心を持っているのか
  • 将来どのような仕事や生き方をしたいのか

を模索している段階にある。

だからこそ大学は、答えを与える場所ではなく、問いを見つける場所でなければならない。

私たちは学生に、

  • 自分の関心や強み、フィールドを発見すること
  • 多様な人と出会うこと
  • 社会とつながること
  • 新しい挑戦を経験すること
  • 他者と協働すること
  • 自分にもできることがあると知ること
  • 社会の中での自分の役割を見つけること

を通じて、自らの可能性を広げてほしいと考えている。

本学が目指すのは、単に知識を修得させる大学ではない。

学生一人ひとりが、自らの問いを見つけ、成長を実感し、自信を持って社会へ歩み出していくことのできる大学である。

3.東洋学園大学の強み(続きを読む)

改革にあたって最初に考えたことは、本学に足りないものを探すことではなく、
「本学がすでに持っている強みは何か」
を改めて問い直すことであった。

第一の強みは、東京・本郷という都心立地である。2016年以来、3学部1研究科が一つのキャンパスに集結している。

しかし私たちは、この立地を単なる交通上の利便性として捉えてはいない。

東京には、企業、行政、文化、メディア、観光、地域社会、NGO・NPO、各種団体、そして世界から集まる多様な人々が存在する。東京は世界有数の大都市であり、その都市そのものが巨大な教育資源である。

大学の教室の外には、社会そのものが広がっている。

私たちが目指すのは、
「東京にある大学」ではなく、「東京で学ぶことに意味がある大学」である。

第二の強みは、本学が長年培ってきた学生の成長を支える教育である。

本学では、学生が入学時点ですでに十分な自信や明確な目標を持っていることだけを前提にはしない。

大学での学びを通じて、

  • 自分の関心や問い、強み、フィールドを見つける
  • 人と関わる
  • 新しいことを経験する
  • 自分で考える
  • 他者と協働する
  • 自分にもできることがあると知る
  • 社会の中で自分の役割を見つける

という成長を支えることを、本学教育の重要な役割と考えている。

第三の強みは、その教育を大学全体として体系化しようとしていることである。教育は個々の教員や授業だけに委ねられるものではない。大学として学生の成長を支え、そのプロセスを改善し、さらに社会へ伝えていくことが重要である。

そのため私たちは、教育を大学内部だけにとどめず、
「見える化」
することを重視している。

教育の内容と成果を教職員自身が理解できるようにする。学生自身が、自分は何を学び、どのように成長したのかを理解できるようにする。そして、高校生や保護者、企業、地域社会にも、本学教育の特色と成果を伝えていく。教育の成果が社会に理解され、評価されることによって、学生募集にもつなげていく。

したがって、「見える化」は単なる広報ではない。

教育を体系化する → 学生の成長を把握する → 教育を改善する → 成果を分かりやすく示す → 社会に伝える
という一連の取組なのである。

これらの強みを活かしながら、東洋学園大学らしい教育をさらに発展させていくことが、TOGAKU IMPACT 2030の出発点となっている。

4.改革の三本柱(続きを読む)

TOGAKU IMPACT 2030は、このような考え方に基づき、改革を三つの柱として整理した。

第一は、「見える教育改革」 グローバル東京 TOGAKU PBL

第二は、「見える組織改革」 学部改革

第三は、初年次教育の「見える化」 教養デザイン学際カレッジ

である。

これらは互いに独立した施策ではない。

学生の4年間の成長を支えるための、一つの教育体系として位置付けている。

TOGAKU PBLは社会と接続する実践的な学びを担い、学部教育改革は各学部の特色や教育成果を明確にする役割を担う。そして教養デザイン学際カレッジは、その基盤となる初年次教育を支える。

したがって、この三つの改革は別々に進めるものではない。学生の4年間の成長を支える一つの教育体系として発展させていくことが重要である。

5.第一の柱――グローバル東京 TOGAKU PBL(続きを読む)

改革の中心に位置づけたのが、グローバル東京TOGAKU PBL(Project Based Learning、課題解決型学習、以下TOGAKU PBL)である。

TOGAKU PBLでは、教育は社会との接点から始まる。学生がグローバル東京という現場に出て、人や組織と出会い、正解のない社会的課題に向き合い、自分の問いと考えを持ち、チームとして一つの方向性を導き出す。身体も頭も動かす教育である。「問いも答えも自分で作る」人間を育てる教育である。

そこで育てたいものは、知識だけではない。好奇心から始まる問いを産む力、コミュニケーション力、課題発見力、協働する力、そして自分自身のフィールドを見つける力である。最終的には、学生が学士号を手にしたとき、自信を持って社会へ漕ぎ出していけることを目指している。

重要なのは、すべての授業を一挙に同じ形のPBLにすることではない。それぞれの学部・授業の特色を生かしながら、すべての教職員、すべてのクラスが一歩ずつPBLへ前進するという考え方である。

TOGAKU PBLは、一つの授業方式ではない。「東京全体をキャンパスにする」東洋学園大学の教育文化そのものをつくる試みである。

6.第二、第三の柱――学部教育改革と初年次教育(続きを読む)

TOGAKU IMPACT 2030の発表時には、「見える組織改革」として3学部の改組を構想した。しかし、ここで本来目指していたのは、学部名や学科名を変更することそのものではない。社会や受験生の変化に対応し、「この学部で何を学び、どのような力を身につけ、どのように成長することができるのか」を明確にすることである。

そのために、

  • 教育内容
  • カリキュラム
  • コース
  • 必要に応じた学部・学科組織

を見直していく。

組織改革は、教育改革を実現するための手段の一つとして位置づける。

第三の柱は、初年次教育の「見える化」である。初年次教育を、単なる「専門教育に入る前の教育」とは考えない。大学4年間の学びの基盤として位置づける。

大学で学ぶためには、

  • 自分で問いを立てる
  • 情報を収集する
  • 自分の考えをまとめる
  • 他者の意見を聞く
  • 議論する
  • 自分の考えを伝える

といった基礎的な力が必要になる。

原構想では、

  • リベラルアーツ
  • アカデミック・リテラシー
  • 情報リテラシー
  • 探究心
  • 思考力
  • 共感力
  • 外国語
  • 産官学連携
  • キャリア・ボランティア教育
  • 学際的な学び

などを、専門教育へつながる教育基盤として位置づけた。

初年次教育、各学部の専門教育、PBLを一つにつなげ、4年間を通じて学生の成長を支えることが重要である。

初年次教育で学びの基礎を築き、各学部の専門教育によって知識や視野を広げ、さらにTOGAKU PBLによって社会との接点の中で学びを深める。その一連の学びを通じて、学生が自らの成長を実感できる教育体系を構築することが、TOGAKU IMPACT 2030の基本的な考え方である。

第二部

構想はどこまで実現したのか

7.TOGAKU PBLの現在地(続きを読む)

TOGAKU PBLの構想は、2024年度から具体化を始めた。2024年度にはPBL推進検討委員会を設置し、9月には1号館1階に学生・教員の成果を発表する「TOGAKU SHOWCASE」を開設した。同年12月には全学研究会を開催し、PBLを全学的な教育として共有する取組を進めた。また、FD研修、経費支援、職員の授業参加など、教職協働による支援体制の整備も進めている。

しかし、ここで重要なのは、こうした取組の数そのものではない。

TOGAKU PBLが目指しているのは、
「東京全体をキャンパスにする」本学の教育文化を形成すること
である。

学生が社会の現場に出て、人と出会い、課題と向き合い、自ら問いを立てながら学ぶ。その経験が4年間の学びの中でどのような役割を果たし、どのような成長につながるのかを整理していく段階へ、本学は進みつつある。

今後の課題は、個々のPBL型授業を増やすことではない。PBLが本学の教育体系の中でどのような意味を持ち、学生の成長にどのように結びついているのかを可視化していくことである。

8.学部改革の現在地(続きを読む)

TOGAKU IMPACT 2030の当初構想では、2027年度を目途に3学部を同時に改組する案を示した。しかし、各学部での議論、学生アンケート、文部科学省との事前相談などを重ねる中で、改革は学部ごとに異なる形へと具体化した。

8-1グローバル・コミュニケーション学部

最も大きな改革となったのがグローバル・コミュニケーション学部である。2026年度から英語コミュニケーション学科の募集を停止し、2027年度には国際共創学部・現代コミュニケーション学科へ改組することとなった。

新学部は「違いを超えて、人をつなぎ、共に創る力を。」をコンセプトとして、

  • 言語・コミュニケーション
  • クリエイティブ・メディアコミュニケーション
  • 観光交流文化
  • 国際共創

の4コースを設ける。

8-2人間科学部

人間科学部については、学部名称や学科構成を変更するのではなく、既存の学部構成を活かしながら教育内容を刷新する方向を選択した。

「人を支える人となる」をコンセプトとして、

  • 心理・カウンセリング
  • スポーツ健康
  • 人間社会

の3コースを充実させる。

8-3現代経営学部

現代経営学部も、学部名称を変更するのではなく、教育コンセプトとコース構成を見直すこととした。

「ビジネスをチカラに。未来力アップ。」を掲げ、

  • マーケティング
  • ビジネス心理
  • ベンチャー・事業承継
  • デザイン経営
  • 資格・スペシャリスト

の5コースへ再編する。

8-4 学部改革から得られたこと

当初の「3学部一斉改組」という構想をそのまま実施するのではなく、必要なところは大胆に改組し、既存組織を活かせるところは教育内容を改革する、という方向へ変化した。

これは2年半の検討と実践から得られた重要な経験である。

学部・学科という組織を変えること自体が目的ではないという認識が、より明確になった。

9.教養デザイン学際カレッジの現在地(続きを読む)

第三の柱である教養デザイン学際カレッジは、2025年度にスタートした。

本学では、初年次教育を単なる導入教育とは考えていない。大学4年間の学びを支える基盤として位置付けている。

専門教育やPBLで学ぶためには、その前提として、

  • 問いを立てる力
  • 情報を収集する力
  • 自分の考えを整理する力
  • 他者と対話する力
  • 表現する力

を身につける必要がある。

そのため、本学は教養デザイン学際カレッジの設置に合わせて、初年次教育を支える体制そのものの見直しを進めてきた。

具体的には、

  • 英語教育開発センターと教養教育センターの統合
  • 英語教育の各学部への移行
  • 教務部における教育企画課の新設
  • 教養基礎演習や情報処理基礎への教職協働体制の導入

などを実施した。

これは単なる組織再編ではない。

大学4年間の学びを支える基盤教育を、授業単位ではなく大学全体の教育システムとして再設計する取組である。

また、数理・データサイエンス・AI教育プログラムについては、2025年8月にMDASHリテラシーレベル認定を取得した。これからの社会で求められる基礎的な情報活用能力やデータ活用能力の育成にも取り組んでいる。

制度や組織を整える第一段階は大きく進展した。

今後の課題は、初年次教育で育まれた力が専門教育やTOGAKU PBLへどのようにつながり、学生が4年間を通じてどのように成長しているのかを継続的に把握し、改善につなげていくことである。

10.理念とブランドの具体化(続きを読む)

TOGAKU IMPACT 2030を具体化する過程で、大学が何を目指し、どのような学生を育てようとしているのかを、教職員、学生、そして社会が共有できる言葉として表現する必要があった。

教育理念の策定にあたっては、教職員から広くアイデアを募集し、質問や提案を含めて42件の応募が寄せられた。

その結果、新たな教育理念として、

  • 「自他を活かしひらく」
  • 「社会と世界に向き合う」
  • 「支えあい未来をつくる」

を定めた。この教育理念は、2024年1月のTOGAKU IMPACT 2030発表後に定められたものであるが、2025年度から始まった第2期中期計画にとっては、その基本的な出発点の一つである。

「自他を活かしひらく」は、自らの可能性を伸ばすとともに、他者を認め、他者とともに成長することにつながる。

「社会と世界に向き合う」は、大学の中だけでなく、東京や社会そのものを教育のフィールドとするTOGAKU PBLにつながる。

「支えあい未来をつくる」は、人と協働しながら正解のない課題に向き合い、社会の未来に関わる姿勢につながる。

したがって、

建学の精神「自彊不息」
↓
教育理念
↓
TOGAKU IMPACT 2030
↓
第2期中期計画
↓
各年度の事業計画
↓
日々の教育と業務

という関係を共有する必要がある。

TOGAKU IMPACT 2030は、建学の精神と教育理念を具体的な大学改革へつなぐ基本構想である。

さらに、創立100周年に向けて、

新スローガン「進み続けることをやめない I WILL. I DO.」

新キャッチコピー「そのワクワクが、未来を変える。」

を策定した。また、ブランドムービー「MY TOGAKU STORY」も公開した。

これらは単独の広報施策ではない。

教育理念、TOGAKU PBL、学部改革、教養デザイン学際カレッジなどの取組を一つの方向へ結びつけ、TOGAKUという大学の姿を内外に分かりやすく示すための取組として位置付けている。

今後は、ブランド上の言葉と、学生が実際に経験する学びや成長との一致をさらに高めていくことが重要である。

11.学生募集と財務の変化(続きを読む)

TOGAKU IMPACT 2030を構想した2024年当時、本学は大きな危機感の中にあった。

当時は、入学者数が480名程度の水準で推移した場合、2028年度には事業活動収支差額比率がマイナス20%近くに達するという厳しい財政予測も示されていた。

しかし、その後の実績は大きく改善した。

入学者数は

  • 2024年度 470名
  • 2025年度 629名
  • 2026年度 701名

と回復した。

また、2026年度当初には事業活動収支差額比率+4.8%の黒字が予測されるまでに財務状況も改善した。

これは2024年当時と比較すれば大きな変化であり、教職員一人ひとりの努力と大学全体が改革に挑戦してきた結果である。

しかし、TOGAKU IMPACT 2030の目的は、短期的に入学者数を回復させることではない。

2030年代に本格化する18歳人口減少の中でも、継続して選ばれる大学をつくることが本来の目的である。

したがって、現在の学生募集の回復によって改革の必要性が小さくなったと考えるべきではない。むしろ、この改善によって得られた余力を、学生の成長を支える次の改革段階につなげることが重要である。

12.2年半の評価―何が進み、何が残っているか(続きを読む)

TOGAKU IMPACT 2030の発表から2年半を振り返ると、当初描いた改革案のすべてがそのまま実現したわけではない。

3学部一斉改組構想は修正された。

一方で、

  • TOGAKU PBLが本格的に動き出した
  • 教養デザイン学際カレッジがスタートした
  • 国際共創学部設置が具体化した
  • 人間科学部・現代経営学部の教育改革が進んだ
  • 新しい教育理念が決定した
  • 新しいブランド表現が生まれた
  • 学生募集が回復した

という大きな変化も生じた。

したがって、個々の改革を立ち上げるという意味では、第一段階はかなり進んだ
と評価できる。しかし、TOGAKU IMPACT 2030で目指したのは、個々の改革を個別に実現することではなかった。

2024年の改革案の最後には、
東洋学園大学には、改革のアセット・素材である人財とキャンパス環境がそろっていると記した。

本当に重要なのは、それらを、
「体系化し、結晶化し、見える化する」
ことである。

この観点から見れば、本学の改革はまだ途上にある。

個々の改革は動き始めた。しかし、それらを一つの教育体系として結び付け、学生の4年間の成長へと接続し、その成果を見える形にしていくことは、これからの課題である。

私は、この2年半を「改革を立ち上げる段階はおおむね達成した」と評価している。

一方で、「改革を結晶化する段階はこれからである」とも考えている。

この意味において、TOGAKU IMPACT 2030はすでに構想段階を超え、実践の段階へ入った、と言うことができる。

第三部

2030年への次の挑戦

13.2030年までの次の改革段階(続きを読む)

この2年半で、本学は教育理念の策定、TOGAKU PBLの推進、学部教育改革、教養デザイン学際カレッジの設置など、多くの改革を具体化してきた。

しかし、2030年までの課題は、個々の改革をさらに進めることだけではない。

それらを一つの教育体系として体系化し、結晶化し、見える化することである。

具体的には、
初年次教育→ 各学部の専門教育→グローバル東京を舞台とするPBL → キャリア教育・就職→卒業後の社会での活躍
を一本の線でつなぐことである。

そして、その中心には、「学生一人ひとりがどのように成長したのか」という視点を置かなければならない。

大学教育の成果は、履修した科目数や取得した単位数だけでは測れない。

学生自身が、

  • 大学に入ったときと比べて何ができるようになったのか
  • 何に興味を持つようになったのか
  • どのような人と関わり、何を経験したのか
  • 将来、社会で何をしたいのか

を自ら語ることができる教育をつくる。さらに、その教育成果を社会にも示していく。

2030年に向けて本学が目指す姿は、
「東京全体をキャンパスにする大学」
そして、
「学生が自分の『好き』とフィールドを見つけ、自信を持って社会へ漕ぎ出す大学」
である。

この姿を理念ではなく教育の実態として確立すること。それがTOGAKU IMPACT 2030の次の段階である。

14.TOGAKU IMPACT 2030、中期計画、日々の教育をつなぐ(続きを読む)

第2期中期計画は、2025年度から5年間の計画として開始した。TOGAKU IMPACT 2030と中期計画、年度計画の関係は次のように整理できる。

TOGAKU IMPACT 2030
「どこを目指すのか」を示す。

第2期中期計画
「そのために5年間で何を実現するのか」を示す。

年度計画
「そのために今年何をするのか」を示す。

したがって、中期計画は個々の事業の一覧ではない。各施策について、「何を実施するのか」だけでなく、「なぜ、それを実施するのか」をTOGAKU IMPACT 2030に立ち返って確認する必要がある。施策そのものは、社会環境や実施結果に応じて変更することがある。しかし、施策を変更するときにも、
「TOGAKU IMPACT 2030で目指した何を実現するための変更なのか」
を確認する。これが、中期計画が個別施策の集合となり、方向性を失うことを防ぐための基本となる。

そして、各学部・部署・教職員の日々の教育と業務が、その方向に沿って進む。

したがって、中期計画の進捗を確認するときにも、「予定していた事業を実施したか」だけでは十分ではない。

重要なのは、
「その結果、TOGAKU IMPACT 2030で目指した大学の姿に近づいたか」
を確認することである。

社会環境は変化する。

学生のニーズも変化する。

当然ながら、個々の施策や組織の在り方も変わっていく。

しかし、そのような変化の中にあっても、
「どのような大学を目指すのか」
という基本構想は共有し続けなければならない。

教職員一人ひとりの日々の教育や業務もまた、この構想とつながっている。

TOGAKU IMPACT 2030が実現されるかどうかは、特定の部署や委員会だけによって決まるものではない。学生と向き合う一つひとつの授業、学生支援、地域連携、入試広報、キャリア支援、事務業務など、大学を構成するすべての活動の積み重ねの上に成り立っている。

だからこそ、基本構想、中期計画、年度計画、そして日々の教育と業務を一つの流れとして理解し続けることが重要である。

結び

TOGAKU IMPACT 2030は、過去の改革案を保存するための文書ではない。

また、一度決めた施策を固定するものでもない。

変えてはならないのは、
「どのような学生を育てたいのか」
という理念である。

一方で、その理念を実現する方法は、時代や社会の変化に応じて進化し続けなければならない。この2年半で、私たちは教育理念を定め、TOGAKU PBLを推進し、学部教育改革や初年次教育改革を進めてきた。

改革は確かに前進している。

しかし、その目的は制度や組織を変えることではない。私たちが目指しているのは、学生一人ひとりの成長が見える教育を実現することである。

そのためには、基本構想は共有し続ける。施策は、その目的と成果に照らして見直す。こうした姿勢が欠かせない。

2030年に向けた歩みは、まだ道半ばである。

しかし、その先にある大学の姿は明確である。

私たちが目指しているのは、
学生一人ひとりが社会との出会いを通して成長し、自らの可能性を発見し、自信を持って未来へ歩み出すことのできる大学である。そして、その成長を大学として支え、社会に示すことのできる大学である。

社会がどのように変化しようとも、東洋学園大学は学びの価値を問い続ける。

そして、東洋学園大学だからこそ実現できる教育を通じて、学生、保護者、高校、地域、企業、そして社会から信頼される大学を目指して挑戦を続けていく。