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[公開講座]第1回 今こそ必要な芸術文化の心~日本人の忘れ物

地域間連携

2022.05.13

学問領域にとらわれない幅広い教養(リベラルアーツ)を学ぶ東洋学園大学の公開講座。
2022年度は持続可能な開発目標“SDGs”をテーマに、第1回を4/30(土)、東京・本郷キャンパスでの対面講座とオンラインでのライブ配信により開催しました。
キャンパスを本郷に集約して以来、最多となる224名(対面45名、オンライン179名)にご参加いただきました。

今年度の初回ということで、まずは東洋学園理事長である愛知太郎よりオンラインでご挨拶をさせていただいたあと、公益社団法人宝生会 理事 シテ方宝生流能楽師、辰巳満次郎氏にご登壇いただきました。

辰巳氏は4歳で初舞台、東京藝術大学音楽学部邦楽科で学ぶ傍ら、18世宗家故宝生英雄(ふさお)の内弟子を経て独立。国内外で公演や普及活動を行い、2001年には重要無形文化財総合指定の認定を受けるなど、高く評価されています。

辰巳満次郎氏

今回は、伝統芸能の中に現代人の大事な忘れ物が存在しているというテーマでお話しいただきました。

まず、能の起源については、聖徳太子が側近の秦河勝(はたのかわかつ)に命じて創らせ、1250年前に奈良・興福寺で修二会(しゅにえ)の儀式として行われたという記録から、「天下泰平」や「国土安穏」など祈りの儀式として始まったと紹介。
芸能が祈りをルーツとするのは世界共通であり、能は室町時代以降、源氏物語や平家物語などの文学を取り入れて芸術性を高め、芸能へと変遷したということです。

次いで、能舞台や役、所作、面など能の表現について説明。
途中、子息の辰巳和磨氏による「すり足」や深い悲しみを表現する「カマエ」などの実演を交えながら解説いただき、会場の参加者も所作を実践しました。
能は何もない空間や抑えた動きは見る人の想像力を喚起し、様々な時空に自由に移動したり森羅万象に身を置いたりすることができる、最も古くかつ前衛的な演劇であると定義。
また、舞台の鏡板とは、神の依り代である松を映しているゆえの呼び名であること、般若など鬼は力のあるものに虐げられた存在であることなど、個々に詳しく解説いただきました。

今回のテーマである日本人の忘れ物については、能から生まれた言葉や習慣について紹介。
演者が退出することを「中入り」と称したことから今では休憩を意味するようになり、「千秋楽」や「お仕舞(しまい)」が終わりを意味するのも、能が発祥だそうです。
また、能のすり足が左足から始まるのは、古くから日本では左は太陽、右は水を表し、左が優先されていたことに由来。足袋や袴は左足から履くなど昔は当たり前だったことも今では忘れられていることに言及されました。
世阿弥の「初心忘るべからず」については、未熟であることを常に忘れず、明日は今より良くなっていなければならないという心構えであると説明。
能は想像力や心を豊かにし、発声やすり足などが健康にも寄与するなどSDGsとの関連性にも触れ、最後に辰巳氏自ら仕舞の「杜若」を披露いただきました。

「杜若」を披露する辰巳氏

講演後にはオンライン参加者・会場参加者とも質問も多く寄せられ、能独特の所作のためにどんなトレーニングをしているかという問いに、特別なことをするのではなく、子どものころからひたすら稽古を積むことによって自然に身についたと回答し、講座を終了しました。

今年度は2022年8月まで全7回にわたり、様々な講師を招くオムニバス形式で開講。
一般の方々もZoomウェビナーで聴講が可能です。

次回は5/21(土)、コロナワクチン・治療薬の開発事例から考える「医薬品研究開発の今」というテーマで、現代経営学部の木川大輔准教授が講演します。ぜひふるってご参加ください。

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