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日本が目指す「新しい資本主義」とは何か。特別講座「アジアに平和と相互理解を」第6回目を開講

グロコミ,人間科学

2022.11.02

世界とアジアの新動向に焦点を当てた一般社団法人ユーラシア財団from Asia助成による特別講座。
10/31(月)、第6回「岸田政権の『新しい資本主義』を分析する」を開講しました。

本講座は本学の授業科目を一般公開しているもので、8年目を迎えた2022年度は「アジアに平和と相互理解を――アジア共同体の基礎を固めるために」をテーマに、15回の講義(オンライン)を予定しています。

第6回の講師は名古屋大学名誉教授・山田鋭夫氏。
山田氏は名古屋大学博士課程を経て、大阪市立大学で博士号を取得。
理論経済学、経済学史等の専門家として名古屋大学で教鞭をとられ、現在は名誉教授に就任されています。

山田鋭夫氏

山田氏は初めに、岸田内閣発足時の公約「新しい資本主義」について解説しました。
過去30年にわたる経済停滞と賃金の低下、格差の拡大など新自由主義が日本にもたらした弊害に対し、岸田内閣が提唱したのが賃金アップとGDP成長を促す官民連携による「新しい資本主義」であり、「成長戦略」「分配戦略」に加え、「人重視」をうたったと紹介。
そのうえで山田氏は「新しい資本主義」の問題点を指摘し、GDP成長を促す回路を阻害する要因を項目ごとに説明しました。

また、株式下落を受けて早くも「金融所得課税の強化」を取り下げるなど、岸田内閣のグランドデザインにおける変節を、「分配軽視」「成長重視」「労働所得倍増の放棄」の視点から考察しました。

さらに、「過去20年で個人金融資産が3倍となったアメリカに対し、資産の半分以上が預金・現金の日本は1.4倍に過ぎず、貯蓄から投資にシフトさせる必要がある」という、政府の打ち出した資産所得倍増プランについて言及。
日本企業は投資に慎重で活性化につながらない、金融主導型のアメリカと輸出主導型の日本では経済構造が大きく異なるなどの理由から、山田氏は「アメリカ型を目指すことは無意味であり、金融資産ゼロ世帯が22%を占める日本では、むしろ格差と貧困の拡大を招きかねない」と、警鐘を鳴らしました。

ポストコロナ社会についても考察を加え、「潜在的に比重を増している医療・教育・文化などを伸ばし、『ゆたかな生(well-being)』への転換を図る『人間形成型社会』の実現に取り組むべきである」と提言しました。

最後に「新しい資本主義のGDP至上主義の実現は困難であり、分配重視に立脚しwell-being向上を目指すことが岸田政権の目指す『人の重視』につながる」と総括し講座を終了。
質疑応答では「新しい資本主義が骨抜きになった理由」「円安の問題」などの質問がよせられました。

今年度は2023年1月まで全15回にわたり、様々な講師を招くオムニバス形式で開講。
一般の方々もZoomウェビナーで聴講が可能です。

次回は11/7(月)、「遙かなる隣国南米ペルー:アジアとの戦略的パートナーシップ 」というテーマで、駐ペルー日本大使・片山和之氏が講演します。ぜひ奮ってご参加ください。

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