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アイヌ民族の伝統と苦境の歴史を学ぶ。「グローバル交流入門」のゲスト講義

グロコミ

2023.03.01

1/23(月)、グローバル・コミュニケーション学科の1年次科目「グローバル交流入門」(佐藤泉教授)にて、札幌アイヌ協会理事、一般社団法人「メノコモシモシ」代表の多原良子氏をオンラインゲストに迎えた特別講義を実施。
アイヌ民族の伝統、迫害の歴史、他の先住民族との交流についてお話いただきました。

アイヌ民族は元々サハリン、千島列島、北海道、東北地方北部に居住していたことがわかっていますが、アイヌ民族の中でも「女性」に関する記録は限られているそうです。多原氏は、2002年からアイヌ女性の生活実態調査を実施し、「アイヌ民族」かつ「女性」である人々が重層的差別の状況におかれてきたことを報告。
日本政府に対して他のマイノリティの女性団体とともに施策を訴えたり、国連本部や欧州本部の女性差別撤廃条約日本政府報告書審査会でアイヌ女性の複合差別の実態のデータを持って委員に訴え、勧告を引き出たりといった活動をされています。

多原良子氏

また、2018年、イタリア、トリノで開かれた世界最大と言われる食の集会「テッラ・マードレ(スローフード協会主催)」には、アイヌ女性が目覚め、エンパワメントを目指す団体「メノコモシモシ」として参加し、160か国、50万人の参加する集会でアイヌ料理の紹介やアイヌの踊りを披露されました。

イタリアで開催されたテッラマードレのアイヌ料理のブース

イタリアでアイヌ舞踊を披露

翌2019年には「先住民族テッラ・マードレ アジア・環太平洋inアイヌモシリ」を北海道で開催。2022年9月にも「テッラ・マードレ」に参加し、他の先住民族と温暖化や環境破壊についても意見交換されるなど、精力的に活動されています。

今回のオンライン講演では、江戸時代から今日までアイヌ民族の情報について詳しくお話しいただきました。

多原氏は、まず江戸時代のアイヌ民族に関して解説。

「場所請負制度」によって5年、10年と強制労働に就かされたことや、アイヌの女性が既婚未婚を問わず和人(日本人)の妻妾とされたこと、冬になるとコタン(村)のメノコの家に転がり込み寝食を貪る越年婿と言う身勝な和人男性がいたことをお話しいただきました。

さらに、明治以後の同化政策によってアイヌの女性は入れ墨が禁止され、入れ墨をした女性が差別の対象になったということ、このような経験は世界の他の先住民族の女性も経験していることをお話しいただき、「男性が記述した歴史の中では女性が埋没してしまう傾向がある」ことも指摘されました。

講演の最後には、「アイヌ民族の遺骨が墓から勝手に盗掘され、長い間大学に標本として保管され、政府は祭祀継承者に数十体のみ返却した。その他の遺骨を白老のウポポイという施設に一括保管しているが、出土地が分かっているのだから故郷に返却し、謝罪をしてほしい」と訴えも。
密度の濃い講演後には、学生との質疑応答も活発に行われました。