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コロナ禍がSDGsにもたらした影響を3つの視点から解説するウェビナー、国内外から約100名が参加

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2021.02.16

1/ 31(日)、東洋学園大学SDGsフォーラム第2回「SDGsと新型コロナウイルス」をZoomウェビナーで開催。
今回は、本学グローバル・コミュニケーション学部の古屋力教授、坂本ひとみ教授、玉井隆専任講師がそれぞれの専門分野からSDGsについて解説しました。
当日は12月の初回に続き100名近くが参加し、中には海外から参加いただいた方も。
学生、教員、NGO、民間企業、政府機関、教育機関、研究機関などウェビナーならではの多様な参加者が集まりました。

古屋力教授(下段中央)、坂本ひとみ教授(左上)、玉井隆専任講師(右上)※登壇順

本フォーラムは、本学の「SDGs教育プログラム開発研究プロジェクト」が主催し、12月の第1回はゲストを招いて開催しました。
今回は2回目で、本学の教員3名が講師として登壇。
トップバッターは地球環境論、気候変動と国際的枠組論を専門とする古屋力教授が務め、「気候危機とコロナ時代の持続可能な世界構築のレシピ~いま、なぜ、グリーン・リカバリーなのか~」という演題で講演しました。

古屋教授は、気候危機と経済政策が二項対立する状況が、新型コロナウイルスによる危機と経済政策の二項対立と共通していること、さらに根本として「情報の非対称性問題」がある、と指摘。

新型コロナウイルス感染症による温室効果ガス減少の効果や、脱炭素社会に向けたヨーロッパの取り組み事例などを紹介しつつ、地球環境改善とコロナ後の経済復興への貢献を通じて脱炭素社会の実現を目指す「グリーン・リカバリー」の重要性について語りました。

「アフター・コロナ時代は地球のOS(Operating System)を書き換えるチャンス」と古屋教授。
脱炭素社会に向けて一人ひとりの行動変容、価値変容を行うことで、気候変動問題のみならず雇用問題の解決や経済成長にも寄与し、さらにSDGsの目標達成にも大きく資する可能性があることを訴えました。

次に、児童英語教育を専門とし、国内外の教員や児童との交流を続ける坂本ひとみ教授が「コロナ時代のSDGsと英語教育」というテーマで講演。

新型コロナウイルス感染症対策が求められる現在は、声を出しての会話練習が難しくなる中、新学習指導要領による変化への対応も求められているという「英語教育にとって受難の時代」(坂本教授)。
一方で、4月から使われる中学校の英語教科書でSDGsが大々的に取り上げられるなど、国際理解教育を見据えた英語教育の必要性が高まっています。

そんな中、具体的な取り組み例として、坂本教授との交流が深く、ユネスコスクールでもある福島県須賀川市立白方小学校の事例を紹介。
さらに、坂本教授がこれまで行ってきた小学校での授業や本学の授業例を挙げながら、英語教育にSDGs教育を盛り込むうえでの「CLIL(内容言語統合型学習)」の有効性について解説しました。

最後に登壇した玉井隆専任講師は、「コロナ時代における『問題』の輪郭:ナイジェリアにおけるロックダウンの経験を事例に」というテーマで講演。
玉井専任講師はナイジェリアの公衆衛生に関して人類学の視点からの調査を続けており、2019年には調査結果をまとめた著書を上梓しています。
(詳しくはこちら

講演ではまず、ナイジェリアを含むアフリカ大陸はアジアやヨーロッパ、アメリカに比べて新型コロナウイルス第一波での感染者数・死者数が圧倒的に少なかった要因を検証。
エボラ出血熱をはじめ様々な感染症と対峙するためのCDC(疾病管理予防センター)や感染症に対応できる病院、空港での水際対策、ポリオインフラ(子どもたちにポリオワクチンを接種させることを目的とした、地域のヘルスワーカーと国・国際組織との連携)の信頼と実績など、ナイジェリアならではの備えが機能していたことを解説しました。

他方で、昨年4~5月には新型コロナウイルス感染症による死者数をロックダウン中の警察・治安組織による殺人件数が上回るなど、暴力の拡大が深刻化しているナイジェリアの現状についても紹介。
ティナという17歳女性の例から、国家権力の腐敗と治安の悪さや貧困、性暴力といった社会課題が新型コロナウイルス感染症によって露呈したことを事例に、SDGsが提唱する「誰一人取り残さない」をコロナ禍で実現するための考え方・想像力の持ち方について問題提起しました。

講演終了後は、参加者から事前に寄せられた質問や、当日Zoomに書き込まれた質問に対して各講師が回答。
講演内容をさらに深掘りするような質問はもちろん、SDGs全般に関わる質問や、他の専門領域を持つ方からのコメントなども。
講師たちの回答中にも次々と質問が寄せられ、参加者のSDGsに対する意識の高まりと熱意が感じられるフォーラムとなりました。