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中国のデジタル戦略の展望とは。特別講座「アジアに平和と相互理解を」第9回目を開講

グロコミ,人間科学

2022.11.24

世界とアジアの新動向に焦点を当てた一般社団法人ユーラシア財団from Asia助成による特別講座。
11/21(月)、第9回「中国のデジタル強国戦略とチャイナ・イノベーションの最前線」を開講しました。

本講座は本学の授業科目を一般公開しているもので、8年目を迎えた2022年度は「アジアに平和と相互理解を――アジア共同体の基礎を固めるために」をテーマに、15回の講義(オンライン)を予定しています。

第9回の講師は野村総合研究所 未来創発センター エキスパートコンサルタント・李智慧氏。
李氏は中国出身で、神戸大学大学院修了後、大手通信会社を経て野村総合研究所に入社。
デジタルエコノミー、中国のメガテックをはじめとした先端企業の研究などを専門とされています。

李智慧氏

李氏はまず、中国におけるデジタル経済の目覚ましい発展について解説。
1990年代後半から政府が陣頭指揮を執って計画的にデジタル化を推進し、2020年にはGDPの約4割をデジタル経済が占めるまでに至った経緯を紹介しました。

また、2021年に発表された“第14次5ヵ年計画”にも触れ、「デジタルインフラの高度化」「デジタル産業発展の加速化」「公平性と効率性の両立」といったデジタル中国建設の全体像についても言及しました。

次いで李氏は、中国が直面するネットビジネス急成長時代の終焉とプラットフォーマーの戦略転換へと話を進めました。
世界から錚々たるプラットフォーマーが集結した「2017世界インターネット大会烏鎮サミット」からわずか数年後、デジタル産業への投資がネットビジネスから先端コア技術にシフト。
李氏はその背景として、「米国による制裁やコロナ禍、独禁法施行の結果、中国のプラットフォーマーが消費者中心のネットビジネスから、産業界を巻き込むB2B2Cに戦略転換していった」と考察しました。

さらに李氏は、中国が迎える新しい時代についても言及。
デジタル技術と産業の融合が加速し、スマートシティ、交通、教育、観光、防災、医療といった分野でのメタバースや、ブランド構築やマーケティングにおけるバーチャル・ヒューマンの可能性について実例を交えて紹介しました。

最後に、中国のデジタル戦略における今後の展望として、「イノベーションが量から質へと転換」「公平性と効率性の両立」「データ大国からデータ強国へ」「不確実性の時代の競争と共創」を挙げ、講座を終了しました。

質疑応答では、日中のデジタル産業の連携についての質問に、「製造など伝統産業の強い日本とビッグデータの応用に強い中国は補完関係にある。非競争分野で互いの強みを生かした提携がすでに始まっており、今後も進んでいくだろう」と具体的な事例を挙げて回答されました。

今年度は2023年1月まで全15回にわたり、様々な講師を招くオムニバス形式で開講。
一般の方々もZoomウェビナーで聴講が可能です。

次回は11/28(月)、「『反中』亡国論 」というテーマで、拓殖大学教授・富坂聰氏が講演します。ぜひ奮ってご参加ください。

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