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八塩ゼミが「クラシック音楽ホール」のマーケティングに挑む!【後編】

2023.02.13

産官学連携,現代経営

現代経営学部「マーケティングとメディア研究ゼミ」(八塩圭子教授)は、2022年度に「横浜みなとみらいホール」との産学連携プロジェクトを実施。同ホールはクラシック専門の音楽ホールであり、2022年10月にリニューアルオープンを控えていました。そこで、学生たちは「ホールのリニューアルオープンを盛り上げ、軌道にのせるためのマーケティング戦略提案」をすることに。企画立案~中間発表までを追った前編に続き、後編では現地リサーチ~アイデアの実践、そして最終発表の様子をお届けします!

Topics 1

ゼミ合宿で現地をリサーチ

八塩ゼミは具体的なマーケティング施策を考案するにあたり、「横浜みなとみらいホール」の本拠地・横浜で2日間のゼミ合宿を行いました。
1日目はまず、ホール内を視察。客席に座って広さを体感したり、ホールのシンボルであるパイプオルガン“Lucy”を間近で見たりと特別に見学させていただきました。

高さ約10mもある優美なパイプオルガンを見学するゼミ生たち

見学後は、ホール関係者との打ち合わせ。中間発表でのゼミ生の提案を踏まえた上で、ホール側から要望が伝えられ、折衷案を模索していくことになりました。

たとえば、中間発表で「ホールの外に映えスポットを作る」という案を提案したチームには、「リニューアルに合わせて“ホール内”に撮影スポットを作りたいので、改めて提案してほしい」との指令が。
同チームのメンバーはすぐに話し合いを進め、「パイプオルガンの撮影スポットがあったらいいよね」「実際に弾いているような写真が撮れたらおもしろいよね」などのアイデアが飛び出し、「ならばトリックデザインを使ったらいいのでは」という結論に。ちょうど横浜にトリックアート美術館があることを知り、急遽見学にも出かけました。

ホール関係者との打ち合わせの様子

また、中間発表で「SNS戦略」を提案したチームは、ホールキャラクターを使った企画が採用されることに。
SNS発信の実現に備えて、横浜の観光スポットをめぐりながらネタになりそうな情報を収集しました。

観光資源の視察として、みなとみらいエリアを調査

ゼミ合宿2日目は、チームに分かれて朝からみっちり3時間の集中議論を実施。
1日目の現地リサーチも活かしながら、ホール側からいただいた課題を達成するにはどうすればよいかを話し合いました。

ちなみに「映えスポット」チームは、この時点ですでにトリックデザインの制作会社を探し出すところまで進展。
ホールのリニューアルまで残り1ヶ月半ほどしかなかったため、合宿後すぐに見積もりを取り、ホール側の了承を得た上でトリックデザインの制作を進めていきました。

合宿の締めくくりは横浜中華街でのランチ。楽しい思い出にもなった様子

Topics 2

自分たちのアイデアを形に

ゼミ合宿後もホール側との話し合いは続き、最終的に「SNS戦略」と「撮影スポット」の実践に加え、ホール主催のクリスマスコンサートに合わせたSDGs企画を行うことになりました。
秋学期の授業では、それらのアイデアをいよいよ形に。
チームに分かれて「SNS戦略」「撮影スポット」「プレスリリース制作」「クリスマス企画」という任務を担い、まるで会社の部署のように役割を分担しながら作業を進めていきました。

チームごとに準備を進めるゼミ生たち

9月、「SNS戦略」担当チームは、TwitterやInstagram、Facebookを駆使して情報発信をスタート。
ホールのマスコットキャラクターである「みなトラくん」を登場させ、キャラクターの認知度を高めるとともに、ホールのファン増加を目指しました。
また、11月に同ホールで開催された音楽劇「天岩戸 横浜みなとみらいホール×洗足学園音楽大学 藤木大地と学生が作るコンサート」のプロモーションにも全面協力。作品の見どころ紹介などを通じて、ホールへの観客誘致にも貢献しました。

SNS戦略の詳細はこちら

学生作のイラストや「みなトラくん」を活かした発信を続けた

「撮影スポット」担当チームは、急ピッチで進めたトリックデザインの制作が無事に完了。
10/29(土)の横浜みなとみらいホールリニューアルオープンに合わせて、ロビーに設置することができました。
来場者からは「本当に立体的に見えてすごい」などの声が聞かれ、撮影を楽しむ人がひっきりなしの状態に。
単なる撮影スポットではなく、トリックデザインという驚きを加えたことで、より興味を持ってもらえたようです。当初は11月末までの設置予定でしたが、好評だったことから12月末まで設置期間が延長されることになりました。

撮影スポットの詳細はこちら

撮影スポット担当班のメンバーと八塩教授

「プレスリリース制作」担当チームは、外部に向けたプレスリリースづくりに初挑戦。
プロジェクトの意図とゼミ生の活動内容をわかりやすく伝えるとともに、撮影スポットの制作秘話や「みなトラくん」のイラストなども盛り込み、思わず読みたくなるプレスリリースに仕上げました。

ゼミ生が作成したプレスリリース(画像をクリックするとPDFが開きます)

「クリスマスコンサート企画」担当チームは、ホール主催のクリスマスコンサートに連動した企画を考案。
来場者全員にクリスマスカードを配布することに決め、「みなトラくん」のイラストが入ったオリジナルカードを作成しました。
さらに、SDGsの観点を取り入れ、抽選でフェアトレードチョコレートをプレゼントするという仕掛けも用意。横浜の菓子店にチョコレートを発注するなど、準備に奔走しました。

オリジナルカードとフェアトレードチョコレート

コスト削減のため、クリスマスカードの封入作業は自分たちで行った

12/21(水)に行われたクリスマスコンサート本番には、「クリスマス企画」担当チームをはじめ、11名のゼミ生が参加。
カード配付、プレゼント企画のアナウンス、撮影スポットでのサポートなどを手分けして行い、来場者に笑顔を届けてコンサートを盛り上げました。

クリスマスコンサートの詳細はこちら

クリスマスコンサートを盛り上げることに成功!

 

Topics 3

最終プレゼン&学生コメント

約10カ月にもおよんだプロジェクトも、ついに終盤。1月中旬にはホール関係者を招いて最終プレゼンが行われました。

最終プレゼンの様子はこちら

ホール関係者に来学いただき、最終プレゼンを実施

ゼミ生たちは、各施策に対する効果測定も自分たちで行って発表しました。
SNS戦略については、「みなトラくん」を絡めた投稿を行うことで、キャラクターの認知度アップに貢献できた様子。
その成果もあってか、11月にはホールのSNSフォロワー数が爆発的に増えました。一方で、フォロワー数やいいね数が増えることが、果たしてホールの集客に直接結びつくのか?という課題も残りました。

「#みなトラグラム」のハッシュタグでさまざまな情報を発信

撮影スポットの成果としては、「写真を撮ってもらう」という目標は見事達成。
しかし、来場者の年齢層の高さなども影響し、その先の「SNSに投稿・拡散してもらう」に結びつけるのは難しかったようです。

撮影スポットでは「思い出になる」と家族で撮影を楽しむ人の姿も見られた

クリスマスコンサートでは、限られた予算内でカードやチョコレート、館内の飾りつけなどを用意することに成功。
来場者アンケートには「親子の思い出になった」「始まる前からワクワクが止まらなかった」などの感想もあり、多くの人に楽しんでもらえたようです。一方で、事前の情報発信が足りなかったなどの反省点もありました。

SDGsの観点からフェアトレードチョコレートを用意し、抽選でプレゼントした

ゼミ生たちは、こうした効果測定結果を発表するだけでなく、今後の展望についてもプレゼン。
「今回の反省を活かして、今後こんなことができるのでは」「新企画として、こんなイベントをやってみては」などの提案も行いました。

今後につなげる企画を提案

プロジェクトを終えたゼミ生たちは、自らの成長を実感しているようでした。
ゼミ長を務めた岑地晃生さんは以下のように話しました。

「プロジェクトを通じて、個人的には『人前で話す力』が成長したと感じています。また、ゼミ全体としては、団結して一つのことを成し遂げる力がついたと思います。当初は学生気分でスタートしたプロジェクトでしたが、最後にはホールのスタッフの方々と同じ気持ちで『ホールを盛り上げたい!』と思うようになっていました。ここまで自分たちの提案を再現させていただけるとは思わなかったので、貴重な経験に感謝しています。これからもホールを応援したいし、自分自身もこの経験を今後の就職活動などに活かしていきたいです」

ゼミ長の岑地晃生さん

また、八塩教授は今回のプロジェクトについて以下のように総評しました。
「ホールのリニューアルオープンをどうやって盛り上げるのかを熱心に考え、企画して実行し、成果を検証するという一連の流れを、本当に自分たち主語(当事者意識)で行えたんだな、と実感できた最終プレゼンでした。今後のビジョンまで明確に持っていることに驚き、学生たちの成長を感じることができました」

八塩圭子教授